2018 Fiscal Year Annual Research Report
The wild boy of Aveyron re-examined: new findings and their implications
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16K13469
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 光太郎 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40179205)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 野生児 / アヴェロンの野生児 / 人間観察家協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
「アヴェロンの野生児」とは、1800年1月に南フランスのアヴェロン県で発見・保護された少年である。フランス内務省と人間観察家協会という学会の強い要請によって、同年の8月にパリに移送され、翌年の1801年1月から1805年半ばまで4年半にわたって、パリ国立聾学校の医師であったジャン=マルク=ガスパール・イタールの教育を受けた。 最終年度にあたる2018年度は、「アヴェロンの野生児」に関する文献や文書の調査を、アヴェロン県立文書館、アヴェロン文芸・科学・芸術協会、およびパリ国立聾学校にて行なった。今回の調査では、発見・保護からそう日をおかずに発行されたと考えられるこの野生児のポスターを確認した。また、人間観察家協会の中心人物であったドジェランドがこの野生児をパリに呼び寄せる上でどのような役割を果たしたのか、そしてこの野生児が収容先のパリ国立聾学校でどのような扱われ方をしたのかも明らかにすることができた。 2016年度から2018年度の調査からわかったのは、「アヴェロンの野生児」の発見・保護から教育の断念までの期間(1800年1月~1805年前半)は、人間観察家協会という学会の設立と消滅(1799年12月~1804年末)の時期と完全に符合するということである。この野生児の診断・教育にあたったのは、精神科医のピネル、聾唖教育者で聾学校校長のシカール神父、そして上記の医師のイタールだったが、彼らはみな人間観察家協会の会員であった。この時期的符合は、人間観察家協会の一大研究プロジェクトして、アヴェロンで見つかった少年が「野生児」という研究対象として仕立てられた(そして協会の消滅とともに、研究・教育が終了した)ことを意味する。
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