2016 Fiscal Year Research-status Report
創造的な知を育成する「師弟関係」の研究―権力関係からケアリング関係への転換
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16K13539
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
生田 久美子 田園調布学園大学, 大学院人間学研究科, 教授 (80212744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 博美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (10528590)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 師弟関係 / ケアリング論 / わざ / 関係性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成28年度は、研究課題分析の土台となる文献調査及びフィールド調査を実施した。文献調査は主として「ケアリング」論に関するものを対象とし、師匠と弟子の関係性を分析する視座となる概念の準備を行った。また、日本における「師弟関係」に関する記述についても文献を収集し、分析を行った。 フィールド調査は、はこだて未来大学、香川県豊島診療所、アメリカ(ボストン)、青森県盛岡市等でそれぞれ実施し、当該研究課題に関するインタビュー、資料収集、研究のための打ち合わせを行った。 また、発達心理学会、教育心理学会等において、当該研究課題に関する研究発表「「創造性」ある教員養成を目指す「熟達」理論の構築」、及び「発達を問う知的視線としてのケアリング論―二人称的実践と三人称的理論を架橋するとはどういうことか―」を行った。そのなかでは、教育関係を「ケアリング」関係と捉えることによって、個別性、文脈性等の観点から「教える-学ぶ」の営みを描出できることを示した。 さらに、平成29年3月には、シンポジウム記録として、『未来教育シンポジウム講演集』(公益財団法人 前川財団)が刊行され、「感覚を通しての「知」の形成」を掲載した。さらに、平成29年3月には、師弟関係及びケアリング関係の題材の一部を共著書『あなたと創る教育心理学』(ナカニシヤ出版)において刊行した。 以上の結果として、次年度以降に実施する予定のフィールド調査、アンケート(インタビュー)調査の理論枠組みを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、本科研の初年度にあたり、当該課題に関する研究全体の理論枠組みを構築することを主たる目的としていた。本年度では、文献調査を実施し、「ケアリング」論に関する知見をまとめ、「師弟関係」を分析するための基本的な概念を整備した。 加えて、フィールド調査も実施することができた。香川県豊島診療所では医療関係における「わざ」の伝承について調査を行った。アメリカ、ボストンにおける調査では、師弟関係のインタビュー候補者の一人であるジェーン・ローランド・マーティン氏を訪問し、研究打ち合わせを行った。その他、複数のフィールド調査を実施し、今後のインタビュー調査の質問紙の骨組みを準備した。 さらに、日本教師学学会において、本研究課題に関する発表を行った。 上記の通り、本科研の研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の2年目にあたる平成29年度は、国内及び、国外におけるインタビュー調査の実施を予定する。調査と並行して、「ケアリング関係」としての「師弟関係」がもつ教育効果及び教育学的意義を理論的に整理していく。それらの結果をまとめ、学会及び学会誌において一部の成果を発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
旅費の使用に関して、割引等を有効に使用することにより、支出を抑えて効率的な運用ができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度のフィールド調査旅費として活用する。
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