2017 Fiscal Year Research-status Report
異文化理解教育の新たな課題-ドイツの極右グループの音楽活動を中心に-
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16K13543
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
畔上 泰治 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70184174)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | rechtsrock / 政治と音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度(2017年)の研究活動は以下の通りである。 (1)2017年は日本と同様にドイツにおいても国会の選挙の年であった。移民問題などに関して制限的・排他的な考え方をとる極右の政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が戦後初めて国会に議席を確保するという躍進を遂げた一方で、与党のCDU/CSUは単独での過半数を確保できず、組閣が難航し、最終的には年を越えることになった。政治的にこのような状況下にあった2017年のドイツにおける青年の政治への参画活動に関して、インターネットを通して発信されたメッセージを収集し、とりわけその言語的な特徴に関して分析を行なった。具体的には、中東諸国を中心とした多数の難民・移民の受け入れ問題に関して、難民の受け入れに反対・制限側に立つ言動に注目し、その主張の正当性がどのように構成されているか、との観点に立ち資料を分析した。 (2)戦後ドイツにおける異文化との共存を目指した取り組みに関して、「非ナチ化」政策に焦点を絞り、資料の収集・分析を行なった。とりわけ、戦後70年を経た今なお生じているこの問題に関して、21世紀以降の具体的な文化・社会問題に関する考察を行なった。その成果の一部を、高校生に対する模擬授業の中で還元した(具体的には、日本のアイドルグループ、音楽バンドがコンサートで用いた、ヒトラー時代の軍服と類似した衣装が引き起こした国際問題を例に、現代文化に対する戦争の記憶に関するテーマを考えた:2017年10月5日、牛久栄進高校生、約50名)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2017年秋にドイツにおける青少年の音楽活動の実情の把握と、政府機関において青少年教育・保護に関わる携わる職員、および青少年の政治活動を研究する大学研究者へのインタビューを予定していたが、上記の通り、2017年のドイツの国会議員選挙の結果が政治的に大きな混乱を引き起こし、組閣が著しく遅れた。それに伴いインタビューの予定者との日程調整のめどがつかず、現地調査・インタビューを延期せざるを得なくなった。ドイツでは2018年初めになりようやく連立政権への目処が立ったが、年度末という時期になり、本研究者の勤務校での業務が重なり、渡独が困難な状況になった。そのために、結果として、研究者や教育・社会政策従事者などに対する現地でのインタビュー、資料収集ができなかった。それが主要な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、以下の研究・活動を予定している。 (1)これまでインターネットや研究書、インタビュなどで収集した資料を分析する。とくに現代のドイツの青少年が抱く社会的な閉塞感、疎外感、不公平感、外国人に対する感情、格差感、政治的な無力感などに焦点を当て、彼らがそれをどのように打破や解決しようとしているかに重点を置き分析を行なう。 (2)ドイツへの出張:連邦家庭・高齢者・女性・青少年省においてインタビューす実施する(男女の社会共同参画に取り組む職員)。また、ビーレフェルト、ボン、ベルリンにおいて資料を収集する(大学図書館、音楽活動、路上での政治活動など) (3)研究成果のまとめ:現代ドイツの青少年が抱く社会的な不満や閉塞感に関して、音楽活動との関連から分析して来たこれまでの研究成果を、学会において発表する(6月)。また、本研究のこれまでの成果を論文にまとめ、学会誌に投稿する(10月)。これまでに収集した資料を、授業用教材として活用するために、資料集としてまとめる(2月)
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Causes of Carryover |
平成29年度予定していたドイツ出張が取り止めになり、そのために確保していた予算を平成30年度に繰り越したため。繰り越した経費はドイツにおける資料収集等の旅費に充てる予定である。
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