2016 Fiscal Year Research-status Report
Study on spin dependence in adsorption reaction on surfaces
Project/Area Number |
16K13691
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
倉橋 光紀 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主席研究員 (10354359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子ビーム / スピン / 表面反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
不対電子を持つ原子・分子が関与する化学反応を議論する際、電荷移動におけるパウリ排他原理の制約、化学種間の交換相互作用、三重項一重項変換等の非断熱遷移など、電子スピン由来の効果を考慮する必要がある。これは化学反応全般に関わる普遍的な問題であるが、実験事実の欠如のため、化学反応におけるスピンの効果は良く理解されていない。本研究は水素原子のスピン偏極ビームを作製し、これを用いたスピン依存吸着実験を行い、すでに報告したO2吸着スピン依存性と比較することにより、スピン依存性の起源理解を目的とする。 本年度は、偏極ビーム実験に使用する(1)六極磁子型検出器の開発、および(2)原子状水素ビームの開発を行った。(1)六極磁子型検出器の開発: 負(正)の磁気モーメントを持つ粒子は六極磁子中において収束(発散)することを利用してビーム偏極を評価する方式のスピン検出器を開発し、スピン偏極Heビームを用いて性能試験した。従来のStern-Gerlach実験では狭いスリットを通過した一部のビームしかスピン計測に利用出来ないが、本方式では全流束をスピン検出に利用出来るため検出感度が原理的に高い。既存のチャンバーを改造して本方式の検出器を作製し、正常動作する点と高い検出感度を確認した。(2)原子状水素源の開発:久保らの先行研究に従い、2.45GHzマイクロ波放電による原子状水素源を製作し、水素ビーム生成まで確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、六極磁子型検出器の開発と性能試験を今年度の目標に設定していたが、予想以上に高感度なスピン検出器を開発できたことに加え、原子状水素ビームの立ち上げまで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
原子状水素のスピン偏極ビーム生成と六極磁子型検出器による偏極評価をできるだけ早期に行う。現在、偏極水素ビームを表面に照射し、表面反応確率スピン依存性を計測するための超高真空分析室、試料作製室の立ち上げも進めている。スピン偏極ヘリウムビームによる表面磁性計測も同時に行えるシステムを整備する予定である。装置完成次第、強磁性表面への水素吸着スピン依存性検出実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度作製した六極磁子型スピン検出器は、既存真空容器を改造し、これに既存の排気系と質量分析計を組み合わせることにより構成することができた。水素源については、放電管は当機構工作室の製作品を利用でき、また微動機構の構造を工夫し製作コストを削減できたため、次年度使用額を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ビームのスピン偏極測定と表面反応計測実験を本年度進める予定であるが、これに必要なチャンバー、蒸着部品、試料ホルダ部品製作等に使用予定である。
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Research Products
(8 results)