2016 Fiscal Year Research-status Report
GPUと深層学習を用いた広視野サーベイのための高精度・高速天体認識技術の開発
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16K13783
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷津 陽一 東京工業大学, 理学院, 助教 (40447545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 浩一 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (10343097)
井上 中順 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (10733397)
下川辺 隆史 東京工業大学, 学術国際情報センター, 助教 (40636049)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 深層学習 / 画像認識 / 気象識別 / GPU / CNN |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は民生品のカメラで撮像した可視カラー画像を使って気象識別機の開発を行った。識別クラスは、晴天域、厚雲域、薄雲域、月の4クラスとし、明野観測所に設置した全天カメラの過去数年分のデータから無作為に抽出した1000枚画像に対して目視にてクラス情報を付与した教師データを作成した。最初に試した識別器は25層(1億3千万パラメータ)のCRF-RNNであり、上記教師データを用いた最適化により、月や水滴等の特定条件を除いて80%を超える識別精度を達成した。 上記の試作アルゴリズムは、高い精度と引き換えにハイエンドのGPUと数十ギガバイトのビデオメモリが要求され、容易に移植できるものではなかった。より実用的にするため、年度後半ではこれと同程度の性能を保った軽量な識別器の設計・評価を行った。提案した手法ではCNNの層数を5層(650万パラメータ)としたが、同一の学習データを用いた最適化により、25層の識別器と同等以上の精度で気象を識別することに成功した。最終的な識別精度は93%に達し、人間と同程度の精度が得られたと結論する。これにより、目標として掲げた晴天域の自動識別は達成できたといえる。 複雑なモデルの精度が簡略モデルに劣る理由については、パラメータ数に対して学習データが十分ではなく、局所解に陥っていたためだと予想している。また、現状の気象識別精度の上限は我々が作成した学習データ側に制限されていると考えている。この学習データは複数の作業者が作成したものであり、定量的な判定論理に従って作成されたものではない。このため、薄雲などの透過性かつ濃淡のある曖昧な被写体については、人間であっても統一的な解釈がむずかしく、判断にばらつきが発生していた。将来的には気象識別機と連動した天体観測を実施することで、より精度の高い学習データを自動生成できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気象識別については現状で十分実用的な精度を達成できており、十分な進展があったと考えている。既に国内の望遠鏡ネットワークや海外の望遠鏡ネットワークへの適用を目指して処理プログラムの作成を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は天体画像からの点源抽出とGPUによるデータリダクションの高速化の研究を行う。近年脚光を浴びている時間領域天文学や重力波天体探査において、変動天体の即時識別は喫緊の課題であり、分担研究者との議論を深め適切な問題設定を行う。 点源抽出において現時点で想定しているのは、過去に取得した参照画像から、現在の画像を差し引いた差分画像を用いた天体の探査であり、ノイズの重畳、光学系の収差による引き残しなどのさまざまな要因に対して、人間では真偽を判定できているのに機械では難しいというというような事例である。また、突発天体というカテゴリに限った場合、時間変動というもう一つの座標軸を考慮に入れる必要がある。本研究では、これまでに行ってきた静止画に対する画像認識に加えて、時間変化も加味した突発天体の検知を検討する。 また、これらの解析を高速で実現するために、GPUを応用した天体画像データの高速処理プログラムを開発を開発する。具体的にはデータリダクションに必要な画像の四則演算など基本的な処理をCUDAを用いて並列化して高速化し、上記識別アルゴリズムと併せてリアルタイムの変動天体自動検出を実現する。
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Causes of Carryover |
屋上試験用の全天監視モニタを設置する予定であったが、配分額が想定よりも少なかったため赤道儀の駆動系を自前で開発することとなり、この準備が遅れている。屋上の全天モニタは望遠鏡の配備されるタイミングで購入すれば良いため、この時点での購入を見送り、次年度へ繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度、全天モニタの設計・製造・購入に充てる。また、今後学習データ作成の際に精神的苦痛を伴う単純作業が大量に発生する。この作業の対価として謝金の支払いを検討している。
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