2016 Fiscal Year Research-status Report
電波天文のための超伝導大規模集積回路の基礎技術開発研究
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16K13789
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
井口 聖 国立天文台, チリ観測所, 教授 (10342627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 助教 (00617417)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超伝導 / 集積回路 / SIS / 電波天文 / マルチビーム / 広視野 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高品質(高Rsg/Rn)かつ高臨界電流密度(高Jc)のSIS接合の作製と高周波特性評価、シングルビーム用超伝導集積回路の設計を行った。 ヘテロダイン受信機の集積回路化においては、超伝導体で構成される要素回路を歩留まりよく製作し、その回路パラメータを高精度に抑えておく必要がある。特にSIS接合は様々な臨界電流密度Jcにおいて、リーク電流の低い高品質な接合が必要となる。そして、本年度は、AlNを絶縁層に用いたNb接合を作製し、Jc <45 kA/cm2という従来よりも5倍に高いJcでも、Rsg/Rn > 15という高品質な接合の作製に成功することができた。また、透過型電子顕微鏡を用いてSIS接合の断面解析を実行し、この接合がウエハ上で均質に作製されていることを確認した。以上より、今後、超伝導集積回路化する場合においても、自由度の高い設計が可能になることが期待され、さらに高い歩留まりで作製できる見通しを得ることができた。また、Nb/AlNx/Nb接合では、従来用いてきたAlOx絶縁層に対して、キャパシタンス等のRF特性が異なる懸念があった。そして、当接合は、知られる限りキャパシタンス値が直接的に測定された例がなく、現状では高精度な回路設計が困難であった。そこで、冷却プローブステーションを用いて、その測定を開始し、Jc = 45 kA/cm2における単位面積当たりのキャパシタンス値 (Cs)を測定することに成功した。 シングルビーム用超伝導集積回路の設計については、超伝導体を電極材料として用いた平面回路型直交偏波分離器やサイドバンド分離型バランスドSISミクサ回路を設計し、数mm角の基板上に回路を集積でき、従来の導波管回路と比べて非常にコンパクトにシステムを配置構成できる設計解を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は、H29年度以降のマルチビーム用超伝導集積回路を用いたマルチビーム受信機開発の実現を見据え、(1)超伝導要素回路の作製・高精度評価、(2)シングルビーム用超伝導集積回路の設計、を計画として進めてきた。(1)超伝導要素回路の作製・精度評価については、様々な範囲の臨界電流密度に対して高品質のSIS接合が作製可能となり、マルチビーム化の際の作製歩留まりの確保に見通しを得るなど、着実な進展があった。また、冷却プローブステーションを用いた超伝導回路パラメータの直接評価を順次進めることができた。(2) シングルビーム用超伝導集積回路では、基本設計が完了しており、デバイス作製も開始することができた。超伝導要素回路および超伝導集積回路の両面から、デバイス作製および高精度評価手法などの検討を進めており、概ね当初の計画を進めることができた。また、これまでの成果をまとめ、関連する学会誌への論文投稿、関連する主要国際会議での成果発表、国内では応用物理学会やワークショップに参加し、成果発表をするなど、精力的に成果報告および研究交流を実施することができた。H29以降も超伝導回路の作製と評価を継続することで実験データを蓄積し、超伝導回路設計にフィードバックしていく。そして、様々な超伝導要素回路を作製評価し、集積回路設計手法の確立を目指す。 以上、H28年度は、当初計画どおり、順調に本研究課題を進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、H29 年度は、H28年度までに確立した設計指針を元に超伝導集積回路を再設計し、さらなる性能向上を目指すべく、シングルビーム用の性能評価を継続する。そして、マルチビーム用超伝導大規模集積回路を設計し、H28年度に抽出した条件に基づいて、集積回路チップを作製する。さらに、マルチビーム用集積回路実装筐体を設計製作し、ヘテロダイン受信モジュールとして性能評価し、マルチビーム化に向けた課題を抽出する。 さらに、研究体制を強化するために、マルチビーム化に向けた技術開発では国立天文台先端技術センター・Shan Wenlei 准教授を、また広視野観測の実現に向けた科学検討では愛媛大学宇宙進化研究センター・大西響子 研究員を、研究協力者として本研究課題に参加してもらう。 継続して、国内外の学会や研究会にて参加し、多くの研究分野の研究者達と活発な議論を交わし、広視野高分解能電波天文観測の実現に向けた基礎技術の基盤を構築することを目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の当初執行計画では、海外での国際発表を行うための旅費、そして物品購入、その他で分類される箇所で予定を立てていた。しかし、より研究を確実に進めるため、設計および製造依頼での物品購入をして精密測定評価を外注するのではなく、一括で外注して「TEMによるNb/AlN/Nb接合の断面観察」をすることとした。そのため、経費が物品購入とその他の積算値である 50万円より高くなり、約56万円となった。一方、海外への航空券は季節に依存するだけに計画通り進めることは難しいが、当初予定であった50万円より安く、約43万円ですむことができた。結果、収支としては約1万円、正確な数値としては 8,683円が残ることとなった。 すでに本年度の当初目的がすべて完了したことから、これ以上の執行をすることはせず、最終的に確定された額 8,683円を次年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も、海外での研究会への参加などを計画している。この繰越された8,683円はそれらに組み込みたい。特に、航空券は、季節等に大きく左右されるだけに、この繰越は非常に有用であると考える。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Superconducting Receivers for ALMA Radio Telescope and Future Development2016
Author(s)
Takafumi Kojima, Alvaro Gonzalez, Matthias Kroug, Yasunori Fujii, Keiko Kaneko, Wenlei Shan, Shinichiro Asayama, Yoshinori Uzawa, Kazumasa Makise, Hirotaka Terai, Zhen Wang
Organizer
29th International Symposium on Superconductivity
Place of Presentation
Tokyo International Forum, Tokyo, Japan
Year and Date
2016-12-13 – 2016-12-15
Int'l Joint Research / Invited
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