2016 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ周波数の円偏光パルスによる電子線への角運動量の転写
Project/Area Number |
16K13817
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 宙陛 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60724127)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 偏光状態任意操作 / ベクトル電場波形整形 / 時間反転対称性の破れ / 角運動量の転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
<本研究課題の目的> 本研究の目的は円偏光の持つ角運動量を電子の軌道に転写することである。そのために偏光、位相、周波数の制御された高強度なテラヘルツ周波数帯域の光パルスを生成するためのベクトル波形整形技術を開発する。次に真空中の電子線に対し円偏光テラヘルツパルスを照射し、軌道の変化から有効磁場を算出するための測定系を開発する。これらの測定を経て静磁場の印加なしに光照射によって電子系の時間反転対称性が破れることを実証する。 <平成28年度の実施状況> 電子線の軌道を変えるための任意の電場波形を持つテラヘルツパルスを生成するため、高強度近赤外域ベクトル波形整形技術を用いてパルスエネルギー270 μJ、偏光回転周波数0.1~10 THzの偏光回転パルスを実現した。そのパルスに対して、テラヘルツ周波数帯域のパルスに変換する光学系を作製し、テラヘルツ周波数帯域のパルスの発生をEOサンプリングによって確認した。 真空中の電子線に対し円偏光テラヘルツパルスを照射するための真空チャンバーを独自に設計し工作依頼をした。工作技師と細部を検討し真空チャンバーの削り出しが完了した。円偏光テラヘルツパルスによって軌道を変えられた電子線を検出するため、マイクロチャンネルプレートは回転アームに設置し角度分解測定ができるように設計を行った。また軌道の変化から有効磁場を算出するための参照磁場印加用のマグネットを配置する設計とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画はテラヘルツ周波数帯域の光パルスを生成するためのベクトル波形整形技術、および真空中の電子線に対し円偏光テラヘルツパルスを照射し、軌道の変化から有効磁場を算出するための測定系を完成させることであった。 高強度近赤外域ベクトル波形整形技術は完成し、テラヘルツ周波数帯域のパルスに変換する光学系は窒素パージ環境を構築すれば完成となる。 真空電子線検出装置は真空チャンバー、電子線源、電子線検出器、真空ポンプ、各種電源をすべて選定し部品はすべて購入し揃えた。組み上げる一歩手前の段階まで到達した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り本年度の始めに装置をすべて組み上げ、まずは参照磁場によって電子の軌道が変化しているか角度分解電子検出測定を行って確認する。検出条件の最適化を行った後、円偏光テラヘルツパルスの照射によって電子の軌道が変化していることを確認し有効磁場を算出する。円偏光テラヘルツパルスによる時間反転対称性の破れを実証できた段階で論文、学会発表を通して広く発信する。
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Causes of Carryover |
電子線検出装置の設計に変更が生じたため変更となったテラヘルツ透過窓や電離真空計などの部品の選定が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初購入予定であったテラヘルツ透過窓や電離真空計の購入資金に充てる。
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