2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代高感度磁気トルク測定の構築と強相関電子系への応用
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16K13837
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠原 成 京都大学, 理学研究科, 助教 (10425556)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁気トルク / 擬ギャップ / ネマティック転移 / 回転対称性 / 量子臨界点 / 高温超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の凝縮系物理学において、物質の電子状態 磁気状態を如実に反映する磁化や磁化率の高精度測定は必要不可欠な実験技術である。その中でもピエゾ抵抗式カンチレバーを用いた磁気トルク測定は、微小単結晶に対する量子振動の観測、各種相転移の検出、更には、極めて小さな常磁性磁化率の異方性測定といった広範な精密物性測定に活用されてきた。本研究では、次世代の高感度磁気トルク測定システムの構築を行ない、更に、これを強相関電子系物質における電子状態解明へと展開する。 本年度は、強相関電子系における長年の重要問題である銅酸化物超伝導体の擬ギャップ状態について、これが熱力学的秩序相であるのかどうかの検証を磁気トルクの高感度測定を通じて取り組んだ。銅酸化物の擬ギャップ状態では、電子系が自発的2回対称性(C2対称性) を示すことが、熱電係数測定などから指摘されているが、これが熱力学的秩序相であるのか、或いは何等かの揺らぎであるのかについては当該分野の重要問題として大きな論争の中にある。またこれまでの研究では擬ギャップの出現温度自体が未だに確定せずに、実験手法や物質によって異なる混沌とした状況が続いている。本研究では純良単結晶が得られるYBCOについて磁気トルクの面内磁場方位依存性を精密に測定し、その温度依存性に擬ギャップ状態への相転移を示す明確な異常を観測した。更にHg1201系についても測定を進め、同様に擬ギャップ温度での磁気トルクに異常を観測した。これらは銅酸化物超伝導体の相図の理解において極めて重要な結果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銅酸化物超伝導体の長年の問題である擬ギャップ状態に関して、これが秩序相への相転移であるという重要な研究成果を得た。また新型のカンチレバーを用いたの測定システム構築も進めており、このことから研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
銅酸化物の擬ギャップ状態に関して、磁気トルク測定による研究を進めるとともに、新型カンチレバーによる磁気トルク測定を確立し、高感度システムを実現する。
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Causes of Carryover |
擬ギャップ状態における回転対称性の破れを検証するため、寒剤費と旅費が主な支出となった。尚、次年度使用額は僅かである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として寒剤費を計画する。
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Research Products
(6 results)