2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13848
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
青木 健一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (00150912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | くりこみ群 / 相転移 / 弱解 / 偏微分方程式 / 有限密度 / 有限温度 / QCD / 南部ジョナラシニオ模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
弱くりこみ群は、通常のくりこみ群方程式(微分方程式)に弱解を導入するものである。くりこみ群方程式はミクロからマクロに向かってつぎつぎとスケールに応じた量子補正を加えていく効果を記述している。量子補正が原因となって自発的対称性の破れが起こったり相転移が発生したりする系においては、くりこみ群方程式の解は、特異性を持たざるを得ないので、微分方程式の解としては一定のスケールより先には進めない。つまり、くりこみ群方程式のターゲットであるマクロの物理量を計算することができないことになる。そこで、弱解を導入することによって、この特異点を突破して、マクロまでつながる大域解を得ることが目標となる。 具体的な系として、QCDを考え、その有効理論としての南部・ジョナラシニオ模型を解析する。クォークは質量をもっていないが、相互作用によって、臨界結合定数以上ではカイラル対称性が自発的に破れて質量をもつ。この力学的質量はマクロの物理量でありこれを計算することが目的となる。通常のくりこみ群方程式は、量子補正が積み上がり臨界に達して力学的質量が発生するまでしか追えない。そこで、解は発散する。しかしこの発散自体は物理的に正しい振る舞いであり、2次転移点に近づいたときにその感受率が発散することに対応している。弱解に拡張すると感受率の発散自体は問題でなくなり、臨界点を超えた計算が可能になる。 平成28年度の研究はこれまで計算を準備してきた有限密度・有限温度の場合のカイラル相構造解析を進めたこと、くりこみ群方程式をさらに一般化して、いわゆる平均場近似等の自己無撞着方程式を偏微分方程式化して弱解を定義して物理的な解を自動的に得る方法を検討したことである。平成29年度はこれらを論文としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有限密度・有限温度QCDのカイラル相構造を、弱くりこみ群方程式によって解析するプロジェクトは、平成28年度内に完了する予定であったが、一部の計算結果に疑義があり最終結果をまとめるのに再計算を行った。しかし、平成29年度初めには論文としてまとめられると考えており、大きな遅れではない。 自己無撞着方程式の偏微分方程式化とその弱解適用のプロジェクトについては、順調に各種の系に適用を行った。特にイジングスピン系では当初の期待より極めて簡略に議論を展開することができたので、予想以上に順調と言える。 合わせて、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、まず、QCDの有限密度・有限温度相構造の弱くりこみ群方程式による解析結果を論文として発表することを優先する。その中で、これまでの方法では、弱解をユニークに定義できない状況を発見しているが、この状況は数学的にも未解明な部分であり、弱解のユニーク性の議論はいったん先送りして進める。 弱解には数学的にいろいろな種類があり、一意性のための条件なども単純ではない。上記の未解明な状況については、数学者との議論を行う予定である。 二つ目の課題である、一般的な自己無撞着方程式の偏微分方程式化とその弱解の導入については、いくつかの系を調べて、端緒的な結果を得ている。一般的なフレームワークとして整理し、論文にまでまとめることが目標である。
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Causes of Carryover |
平成28年度末にある日本物理学会に共同研究者を含めて参加予定であったが、学内の事情もあって予定通りの参加日程がとれなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度においても、日本物理学会、関係研究会に参加予定であり、合わせて使用する予定である。
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