2016 Fiscal Year Research-status Report
高活性アモルファス酸化チタンを出発源とする高機能チタン酸物質群の合成
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16K14458
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西山 憲和 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10283730)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化チタン / チタン酸化合物 / リチウムイオン電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
チタン酸化合物(H2Ti3O7,Li4Ti5O12,,CaTiO3など)は,特異な性質と安定性から,光触媒や電極材料,吸着剤など,様々な分野への応用が期待されている材料であり,これらの機能向上のためには,粒子をナノサイズ化させ,高表面積・高活性化させることが重要である.チタン酸化合物の合成法として,水熱合成法や固相反応法などが挙げられるが,いずれも長時間・高温条件下で行われるため,大量合成には不向きである.さらに,長時間・高温条件下での合成は粒子の成長を促進するため,ナノサイズ化にも適さない.以上の点から,ナノサイズのチタン酸化合物をより温和な条件下で合成する手法が求められている. 本研究では,まず,高表面積・高活性なアモルファス酸化チタン(TiO2)ナノ粒子の合成法を見出した.そして,これを出発物質として用いることにより,これまで高温条件下でしか合成できなかったチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を室温下で合成する手法を確立した. さらに,このアモルファスTiO2ナノ粒子を原料とし,LiOH水溶液と室温下で攪拌するという簡便な方法で,Li4Ti5O12ナノ粒子が合成できることを見出した.原料であるアモルファスTiO2ナノ粒子のUV-vis拡散反射スペクトルを測定すると,可視光域に構造欠陥由来の吸収がみられた.この欠陥部分が不安定なため,このアモルファスTiO2は容易にLiOHと反応し,Li4Ti5O12へ転移したと考えられる.一般に従来の合成法では50 nm以上のLi4Ti5O12しか得られないとされているが,本研究で合成したLi4Ti5O12ナノ粒子の粒子径は約10 nmと小さく,今後,電極材料などに応用する場合,有利に働くと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,高表面積・高活性なアモルファスTiO2ナノ粒子の合成法を見出し,これを原料として用いることで,これまで高温下でしか合成できなかったLi4Ti5O12ナノ粒子を室温下で合成することに成功した.さらに,このLi4Ti5O12ナノ粒子の粒子径は約10 nmと従来のものよりも小さく,電極材料として応用する場合に有利である.また,このアモルファスTiO2が高活性を示すメカニズムについても,UV-vis測定などで明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
Li4Ti5O12はリチウムイオン電池負極材料としての応用が期待されており,その粒子径が小さいほど電池としての性能も上がるとされている.今後は,今回合成に成功したLi4Ti5O12ナノ粒子を電極材料として用い,その電気的特性を測定する. また,我々が合成に成功した高表面積・高活性なアモルファスTiO2を原料として用いれば,Li4Ti5O12だけでなく,他の様々なチタン酸化合物も同様に室温下で合成できると考えられる.今後はアモルファスTiO2を原料としてチタン酸(H2Ti3O7),チタン酸カルシウム(CaTiO3)など様々なチタン酸化合物を合成し,それぞれの特性に応じて吸着剤や触媒としての機能を検討する.
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