2016 Fiscal Year Research-status Report
CRISPR/hCas9法による抗原特異的T細胞欠損マウスの作製と評価
Project/Area Number |
16K14591
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡会 浩志 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (70415339)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | iNKT細胞 / CD1d / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞は、抗原提示分子CD1dに提示されるα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)を認識するT細胞亜群で、T細胞抗原受容体としてVα14Jα18を発現することが知られている。従ってJα18欠損によってiNKT細胞は消失する。これまでにVα18領域をPGK-Neoに置換して作製されたJα18欠損マウスは上流のJα61-Jα19が用いられていないことが明らかとなり、iNKT細胞のみならずT細胞クローンの大半(約60%)も欠損していることが明らかとなった。 今回新しいゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いてJα18領域のみを欠損させたマウスの創出を試みた。Vα18領域周辺の塩基の挿入・欠失のシーケンス解析を行うとともに、本領域が存在するChr14においてオフターゲットによる変異がないことを確認した。さらに樹立したマウスについてT細胞抗原受容体領域の頻度解析をRNA-Seqによって行い、T細胞の頻度異常が認められないことも確認できた。またα-GalCer/CD1dに反応性を有する細胞が存在しないこと、またα-GalCer刺激に対して不応答性であることから、iNKT細胞が欠損していることを確認できた。これらの結果からiNKT細胞単独欠損マウスの創出に成功したと判断できる。 今後の疫学的解析のために遺伝的背景をC57BL/6JおよびBALB/cに揃えた系統の樹立までを平成28年度までに終了した。今年度はiNKT細胞の肥満への影響を明らかにするため、高脂肪食を与えたマウスの体重、グルコース負荷、インスリン抵抗性などを検証していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR/Cas9法によって特定の遺伝子領域を挿入あるいは欠損させる方法はほぼ確立していると思われるが、未だに標的となるシングルガイドRNA(sgRNA)の有効性の検証は必要な状況である。今回欠損マウスを作製するにあたって、試験管内で簡便にsgRNAの効果を検証できる系を構築した。標的とするゲノム領域をスプリットEGFPに挿入し、これと同時にsgRNAとCas9を発現する遺伝子を293T細胞株にトランスフェクションすることで、フローサイトメーターあるいは蛍光顕微鏡で切断を確認することが可能とした。このsgRNAスクリーニング系はあらゆる標的に使用可能なユニバーサルな系で、今後創出予定の欠損マウスにも汎用可能である。胚操作やその後の産仔取得には時間と研究資金が掛かるため、事前のスクリーニングは必須と位置づけられる。 当初の計画通り、平成28年度内に当該マウスの樹立まで終了していることから、本研究課題は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
真のiNKT細胞欠損マウスの樹立に成功したことから、iNKT細胞の関与する疫学的解析を進めていく。iNKT細胞は自然免疫と獲得免疫の間に位置し、免疫系全体を調節する役割を担っていると考えられる。本研究課題においては、iNKT細胞を起点とした肥満と免疫に着目し、高脂肪食負荷を与えた状況での体重、グルコース負荷、インスリン抵抗性の遷移並びに、iNKT細胞自身及びそれに伴って変動する他の免疫系細胞のフェノタイプと機能について解析を進めていく計画である。ここまでの結果をもって論文投稿を予定している。 併せて、新しく開発したsgRNA選抜法を駆使して、他の着目すべき遺伝子群や遺伝子発現制御領域、マイクロRNA発現領域についても欠損細胞や欠損マウスを樹立していく計画である。
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