2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14600
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 信彦 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (10525596)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表現型 / マウス / アソシエーション分析 / 相関ルール / フェノーム / オミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では、マウスの網羅的表現型データを用いて、表現型間の関係性の全景の理解を深めるためのワークフローを開発した。IMPCのウェブサイトからダウンロードした3,100変異系統の網羅的表現型データを用いたアソシエーション分析により、オントロジーで整理された532種類の表現型間の関係性について調査し、345種類の表現型から構成される3,686の有意な相関ルールを導出した(FDR < 0.1)。3,686の相関ルールの理解を容易にするために、このルールを構成する345種類の各表現型別に、表現型-表現型相関ルールのセットを定義し、この相関セットを基にした因果傾向特性解析により、原因傾向特性を持つ60種類の表現型と、結果傾向特性を持つ49種類の表現型を同定するとともに、表現型の多面的発現のモジュール性(Modular Pleiotropy)を提示した。さらに、相関セットの構成要素(表現型)の類似性を基に階層的クラスター分析により、仮想のフェノームワイドな表現型相関ネットワークを構築し、これが7つのサブネットワークに分類されることを示した。また、表現型発現の連続性の理解のために、各相関セットをサブパスウェイに変換する手法を開発し、283のサブパスウェイを使って、仮想のフェノームワイドな相関パスウェイを構築した。本解析で得られたデータリソースは、遺伝子の多面的発現やヒト疾患の病態の理解を深めることに役立つとともに、現在進展しているマルチオミックスの研究分野でのフェノームのリファレンスデータリソースとしての利活用が期待される。 上述した解析と並行して、本研究で得られた最高レベルの確度を持つ表現型間の相関関係を基に、変異系統の未検査の形質異常を高精度に予測可能なアプリケーションのプロトタイプを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主たる目的は「表現形質の異常を高精度に検出するためのワークフローの開発」であり、上述したように、現在までに、その一事例を提示することができた。さらに副産物として、マウスの表現型間の相関関係のレファレンスデータが提示され、表現型間の関係性の全体像の理解を深めることができたことから、当初の予定よりもインパクトの大きな成果を得た。 想定以上の成果が得られた一方で、有意な3,686の相関ルールの詳細な機能解析、これらのルールを基にしたフェノームワイドな相関ネットワーク/パスウェイの構築法の開発及びその構造解析などの追加の解析が必要となった。これらを実現したことで想定より多くの時間を要し、次年度に予定されている解析が時間的制約を受けることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、本研究課題の副産物として、マウスの表現型間の相関関係のレファレンスリソースを提示することができ、これは当初の予定よりもインパクトの大きな成果となった。そこで、平成30年度では、この成果を論文発表するとともに、Webアプリケーションとして公開することを最優先の課題として行う。また、本研究課題の主たる目的(「表現形質の異常を高精度に検出するためのワークフローの開発」)に沿った研究も並行して行う。即ち、本研究で得られた最高レベルの確度を持つ表現型間の相関関係を基に開発した、変異系統の未検査の形質異常を高精度に予測可能なアプリケーション(プロトタイプ)を、ウェブアプリとして公開することを検討している。
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Causes of Carryover |
(理由) 論文投稿に係る経費を算出していたが、投稿予定を平成30年度に変更したため。この変更は、当初の予定よりインパクトの大きな成果が得られた一方で、追加して行う必要が生じた解析に想定より多くの時間を費やすことになったことに起因する。 (使用計画) 前年度の繰越金は、論文投稿に係る経費として使用する予定である。また、開発したアプリケーションのホスティングサービス費も前年度と同様にその他の経費として計上する。
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