2016 Fiscal Year Research-status Report
ミスマッチ修復による合成エラー修復と誤った相同組み換え抑制の統一的理解
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16K14671
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 達郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50452420)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミスマッチ修復 / 相同組み換え / 突然変異 / ゲノム安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミスマッチ修復機構は、DNA合成の誤りを修復して突然変異を抑制するDNA修復機構である。ミスマッチ修復機構のもう一つの重要な役割は、類似配列間の(誤った)相同組換えの抑制である。類似配列間の組換え中間体には、配列が同一でない部分でミスマッチ塩基対が生じ(ヘテロ二重鎖)、ミスマッチ修復システムがこれを認識することで組換え中間体の解消を引き起こすと考えられている。しかしながら、誤った組換えの抑制とミスマッチ塩基の修復という二つの異なる反応が、どのような機構で分岐し、どのような制御によって適切に機能するのかはよくわかっていない。本研究では、誤った組換えの抑制を試験管内で再現し、この分岐機構を理解することを目指した。ツメガエル卵核質抽出液(NPE)にプラスミドDNAを加え、相同領域での組換え反応の検出を試みたところ、二重鎖切断部位を挟んで相同領域が存在する際に、相同領域間で一本鎖アニーリング(SSA)が効率よく起こることが分かった。相同領域間に塩基置換を導入して相同性を下げていくと、SSAの効率が顕著に減少した。さらにこのときミスマッチ修復因子MutSαをNPEから免疫除去すると、類似配列間のSSA効率が回復することが分かった。これらの実験は、ミスマッチ修復システムによる相同組み換え抑制反応をはじめて試験管内再現したものである。さらにこの系を利用して相同組み換え(SSA)抑制に必要な因子を探索し、責任ヘリカーゼを同定した。酵母遺伝学を用いた先行研究と一致し、DNA合成エラー修復に必要なヌクレアーゼ(MutLαおよびExo1)は誤った組換え抑制には必要でないことも分かった。さらに、誤った組換えの抑制が起こる際に、特徴的なDNA中間体が蓄積することを発見した。この中間体の構造推定と、中間体が蓄積する理由の解明が、次の重要な研究課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り、誤った組換え抑制反応の試験管内系構築に成功した。この系の効率は当初の予想を大きく越えており、実験系に投入したDNAの大半が組換え反応に利用されていた。したがって、マーカー遺伝子を使った間接的な組換え反応検出ではなく、組換え中間体を直接検出することが可能になり、組換え抑制中間体DNAの検出に至った。さらに、この実験系を用い、誤った組換えの抑制に機能する責任ヘリカーゼを同定することができた。したがって、本年度はおおむね当初の初年度計画目標を達成し、さらにいくつかの部分で当初の予想よりも大きな進展を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従い、どのような因子やDNA構造が、ミスマッチ塩基のヌクレアーゼによる削り込み、修復の経路と、ヘリカーゼに依存したヘテロ二重鎖の解消を分岐させているのか解析を進める。
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Causes of Carryover |
本年度は実験系の構築が予想以上に順調に進んだため、微量の相同組み換え産物検出に対応するための試薬や機器類の購入の必要がなかった。また、実験の進展に合わせて生化学的な解析に注力したため、本研究者のこれまでの研究資産を有効利用することができた。結果として支出額が当初予定を下回り次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究の進展に合わせ、本年度の剰余額を利用して新たな実験系の構築に取り組む。さらに抗体や研究試薬を拡充し、これまでの知見をさらに深めることを目指す。
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