2016 Fiscal Year Research-status Report
オウム類の前後にずれた嘴はいかにして作られるか?脊椎動物の顔面形態進化機構に迫る
Project/Area Number |
16K14789
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
土岐田 昌和 東邦大学, 理学部, 講師 (80422921)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脊椎動物 / オウム類 / 嘴 / 形態 / 発生 / 比較 / 進化 / 小顎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は鳥類の中でも極めてユニークな“前後にずれた”嘴を持つオウム目に着目し、進化発生学的解析により、その特異な顔面形態を作り出す分子基盤の特定を目指すものであるが、研究の初年度に当たる平成28年度は細胞増殖マーカーを用いて、鳥類胚の嘴組織での分裂期細胞の分布パターンの定量評価を行う計画であった。 鳥類の嘴形態の多様性が作り出される背景には、嘴を構成する細胞がいかに増殖するかが大きく関わっていると予想される。鳥類の胚期の嘴源基先端部には細胞の分裂活性が極めて高い「成長域(growth zone)」と呼ばれる領域が存在し、海外の研究チームが実施した先行研究により形状の異なる嘴を持つウズラとアヒルの胚では上顎の成長域の空間パターンが異なることが報告されていた。しかしながら、先行研究では下顎の解析は行われておらず、上下で長さの揃った正常な嘴を作り出す上で細胞の増殖様式がどう関わっているかは不明であった。そこで、研究代表者は最新の細胞増殖マーカー、EdU(5-ethynyl-2'-deoxyuridine)を用いて、オカメインコ、ウズラ、アヒル、以上3種の鳥類の嘴形成期にある一連の発生段階の胚の上下の嘴組織において、分裂期細胞を特異的に染色し、分裂期細胞の分布パターンの記述と得られたパターンの種間比較を試みた。 標準プロトコールに従い、鳥類胚顔面組織にEdUを導入し、組織切片を作成後、EdUで標識された細胞の検出を試みたが、上下顎に十分な数の標識細胞を持つ標本を一定数得ることができなかったため、3種間の定量比較を行うことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前述の通り、標準プロトコールに従い、鳥類胚顔面組織にEdUを導入し、組織切片を作成後、EdUで標識された細胞の検出を試みたが、上下顎に十分な数の標識細胞を持つ標本を一定数得ることができず、3種間の定量比較を行うことは事実上できなかった。その最大の原因として、主たる解析対象であるオカメインコの胚では、ウズラ胚やアヒル胚では問題なく利用できるEdU導入の標準プロトコールがうまく適合しなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
オカメインコ、ウズラ、アヒル、以上3種の鳥類胚の嘴組織での分裂期細胞の分布パターンを定量比較するためには、オカメインコ胚の顔面組織において確実に分裂期細胞を標識する必要がある。EdU導入のプロトコールを速やかに確立し、解析に供することが可能な標本を得ることが喫緊の課題である。
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Causes of Carryover |
物品費が少額残ったが、研究に必要な物品を購入するには不十分な額であったため、次年度使用額として計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度請求分と合わせて、鳥類胚頭部における分裂期細胞の標識実験の実施に必要な試薬類の購入費(物品費)として使用することとしたい。
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