2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14819
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
近藤 恵 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (40302997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海部 陽介 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, グループ長 (20280521)
篠田 謙一 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 研究調整役 (30131923)
佐藤 宏之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50292743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 浜北人骨 / 日本の旧石器時代人骨 / 骨考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
縄文時代より古い「旧石器時代人骨」の出土が報告された日本の遺跡は約20箇所を数えるが、再検証が進められた結果、実際には旧石器時代まで遡らない人骨が多数確認され、琉球諸島以外で旧石器時代に遡ることが確認されているのは、静岡県浜松市根堅の石灰岩採石場から50年以上も前に発見された浜北人骨だけである。本研究では、浜北人骨出土地の再調査に挑戦して新たな遺跡を探査することを第一の目的とした。今年度は初年度であるため調査の準備から始めた。8月には現地の下見を行い、9月には調査許可を得るための事前準備として浜松市長、浜松市文化財課、浜松市博物館、遺跡所有者、地元民を訪問し調査協力を依頼した。11月には発掘調査許可申請を行うとともに、現地協力者らとともに現地下見を行い、具体的な方針を固めた。12月23日~29日の7日間、本年度の発掘調査を実施した。 浜北人骨が発見された洞穴は既に崩され、ほぼ更地になっているが、まずは1960年代の人骨発見当時の調査地跡にて、当時の堆積物の位置や調査トレンチの位置を過去の資料と詳細に照らし合わせる作業を、地元民の協力を得ながら行った。それにより特定した地点を中心に周辺の堆積を調査し、過去の化石骨包含層の残部と思われるものを確認し、さらにその堆積物中から動物骨片数点を発見した。また、過去の調査地点とは別に、化石包含層である可能性のある堆積物を見つけていたため、トレンチを切って掘り下げ地質調査を行った。さらに、根堅遺跡近傍にある同様の石灰岩洞穴数ヶ所について、予備的な調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浜北人骨が発見された洞穴は既に崩され、ほぼ更地になっているが、1960年代の人骨発見当時の調査地跡にて、当時の堆積物の位置や調査トレンチの位置を過去の資料と詳細に照らし合わせた結果、特定するに至った。特定した地点を中心に周辺の堆積を調査したところ、過去の化石骨包含層の残部と思われるものが確認され、さらにその堆積物中から動物骨片数点が発見された。これらの動物骨の年代については、次年度中に明らかにするよう研究を進めているが、もし動物骨片が浜北人骨と同時代のものであることが確認されたら、この堆積物についてさらに発掘を進める必要が生じるため、大変重要な発見である。また、過去の調査地点とは別に、化石包含層である可能性のある堆積物を見つけていたため、トレンチを切って掘り下げ地質調査を行った。その結果、この堆積には化石の包含がないことが確認されたが、地質が明らかになったことで根堅遺跡一帯の山塊の局所的な地殻変動について知見を得ることができた。さらに、根堅遺跡近傍にある同様の石灰岩洞穴数ヶ所について予備調査を行った結果、旧石器時代に遡る可能性のあるものと、それより新しい時代である可能性のあるものがある程度判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の発掘調査において確認された、過去の調査の堆積物について、地質サンプルを採取した。これらについて、過去の記録と比較するため、詳細な土壌の分析を行う予定である。また、今回発見された過去の堆積物から出土した動物骨数点については、放射性炭素年代測定を実施すべく、実験を進める予定である。2016年度に確認された過去の堆積物の残部は、量的に少ないものであるが、2017年度はこの堆積について包含物を確認するため、発掘調査を行う方針である。可能な限り残部すべての調査をしたいと考えている。これを実施するためには安全面の対策がまず必要となるため、現地の行政担当者と協議し、実施に向けて進めて行く予定である。 また、発掘調査には現地住民の理解と協力が欠かせないため、引き続き情報交換し、円滑に調査できるよう進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
発掘調査において必要となる経費の一部について、地元業者らの協力により、予定より低額の支出で済ませることができた。2016年度の調査の結果を受け、今後進めるべきことを考えると、次年度の経費が嵩むことが予想されたため、残金を次年度に回し、効果的に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に採取された土壌試料および動物骨試料について、分析を行うための費用が必要となった。また、確認された堆積物の発掘調査を進めるためには、事前に専門業者による調査地点の地質調査を実施する必要が生じた。さらに、調査地点の安全対策を行ってからでないと発掘調査が実施できないため、安全対策にかかる費用が必要となった。特に専門業者による調査と安全対策については、調査実施前に想定していなかったため、次年度使用により一部賄えることが非常に有効である。
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