2016 Fiscal Year Research-status Report
精子のin vivoイメージングを用いた受精メカニズムの解明
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16K15022
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
笹浪 知宏 静岡大学, 農学部, 准教授 (80322139)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 受精 / 精子 / 輸卵管 / 精子貯蔵管 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鳥類の貯精嚢を主な研究対象とし、輸卵管における精子貯蔵、精子選抜および精子輸送による受精の制御システムをイメージングにより可視化し、その分子メカニズムの解明を目的としたものである。また、貯精嚢での長期間の精子貯蔵メカニズムを明らかにすることで、畜産や不妊治療の現場にフィードバック可能な、精子の新しい液状保存技術の開発を目指すものである。 体外から精子を可視化する技術を開発するために、グリカールを基質として、クロルペルオキシダーゼにより、グルコースの2位の水酸基にヨウ素または臭素の導入を試みた。その結果、合成、単離・精製には成功したが、合成産物は細胞毒性が強く、実験に使用できなかった。そこで市販の蛍光試薬であるSiR-hoechstおよびSYTO-61を用いて精子を標識し、IVIS imaging systemを用いた可視化を試みた。その結果、マウスを用いた予備的実験ではあるが、体外からの精子蛍光の観察に成功した。 一方、精子の運動制御に関わる因子の同定に関しては、貯精嚢抽出物の各種クロマトグラフィーおよびLC-MS/MS解析の結果から、酸化ストレス除去活性を有するタンパク質を同定した。このタンパク質に対する特異的な抗体を作成し、免疫組織学的解析を行ったところ、貯精嚢での発現が確認された。精製タンパクが精子の運動に及ぼす影響を調べたところ、このタンパク質は、精子のインビトロでの生存性を延長した。しかし、その効果は限定的であった。加えて、低分子分画には、アクチン結合タンパク質のC末端ペプチドが検出された。合成ペプチドを作成し、精子に及ぼす影響を観察したところ、ミトコンドリア活性、細胞内カルシウム濃度の上昇反応が観察された。これらのことから、貯精嚢内における精子の維持には、運動の停止、酸化ストレスの除去に加え、さらなるメカニズムが存在する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目指している体外からの精子のイメージングにおいて、蛍光試薬とIVIS imaging systemを用いることで、可視化が可能であることが可能になった。また、酸化ストレスを除去タンパクの同定を進めつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
IVIS imaging systemでは、可視化は可能であるが、分解能の低さが問題となっている。より高輝度な蛍光色度であれば、定量的な観察も可能と考えている。名古屋大ITbMや成育医療研究センターとの共同研究により、問題解決を目指す。 加えて、精子の運動制御に関わる因子の同定に関しても、精子の体外培養実験、人工授精実験を行い、当初の計画通りの研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
実験補助に対する謝金を予定していたが、雇用しなかったため、および学内共同機器の使用により、設備備品費の購入をしなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は精子の標識に必要な消耗品費の使用が増加すると予想されるため、消耗品の購入を計画している。また、生育医療研究センターとの共同研究に必要な旅費が増加すると予想されるため、国内旅費として使用することを計画している。
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Research Products
(15 results)