2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K15080
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
澤畠 拓夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (80709006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早坂 大亮 近畿大学, 農学部, 講師 (20583420)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外来アリの樹種選択制 / 餌提供木と営巣木 / アルゼンチンアリの集団越冬 / アリ集団の攻撃性 / 攻撃性とコロニー分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度研究計画は1)4つの遺伝型のアルゼンチンアリの食性の月ごとの変化、2-1)アリマキとアルゼンチンアリの街路樹の樹種による違いである。 1)の研究課題を遂行する前に、神戸港のアルゼンチンアリの4集団の分布と攻撃性についてのSunamura et al.(2007)の報告から10年経過後も4集団の分布や攻撃性が不変であるかどうかを調べた。その結果、4つの集団の攻撃性については10年前と同様の結果が得られたが、摩耶埠頭に分布する集団の配置が変化し、攻撃性の低いC集団の分布域のほとんどが攻撃性の高いJ-main集団に置き換わっていることが判明した。攻撃性が10年後も不変であった事実は、本種の集団的な特性が恒常的なものであることを示唆するものである。本研究により現在の集団の配置が明らかになったことで、当初の研究計画である集団間の食性の違い関する研究に着手可能となった。 2-1)の研究課題は予定通り調査が進んでいる。アルゼンチンアリの緑化樹の利用個体数は調査した5樹種(クスノキ、ヤマモモ、シャリンバイ、カイヅカカイブキ、キョウチクトウ、シャリンバイ)間で有意に異なっており、シャリンバイとヤマモモの2樹種が他の樹種に比べて多くの個体に利用される結果が得られた。シャリンバイは5樹種の中でアリマキ等の甘露分泌昆虫の個体数が最も多かったが、ヤマモモは甘露分泌昆虫の個体数は少なくはないものの、他樹種と比較して多いというほどではなく、甘露分泌以外の要因の存在が伺われた。またヤマモモ上のアルゼンチンアリ個体数は冬季に急上昇していること、また腐朽した部分のある全てのヤマモモが営巣木として利用されていたことから、越冬のために利用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
食性研究の前に、アルゼンチンアリ4集団の現在の攻撃性と分布を明らかにする必要があった。そこで調査を行なったところ、攻撃性はSunamura et al.(2007)の報告と同じであったものの、分布についてはSunamura et al.(2007)の報告と異なる部分が見出されたため、当初の予定を1年遅らせ、まずSunamura et al.(2007)の報告の10年後の再検討を行い、アルゼンチンアリ4集団の攻撃性の確認と現在の分布を明らかにした。これにより、当初予定していた安定同位体分析用の予算を消費することがなかったため、これについては翌年への持ち越しとした。それ以外の研究課題については順調に進んでおり、得られた成果の一部を学会発表し、現在論文を投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年行うはずであった研究課題のうち、1)4つの遺伝型のアルゼンチンアリの食性の月ごとの変化については、昨年行った4集団の分布の再検討結果をもとに、今年度、実施する予定である。これについては、神戸港のみならず、他地域でもサンプリングを行い、地域間の差異を明らかにすることで食性が集団の性質として特定できるかどうかを検討する。これにより、昨年度の未利用の予算も含めて使用し、当初の計画よりも強い説得力を持った結果が得られることが期待できる。 アルゼンチンアリの緑化樹木利用については、改革通り進み、当初の期待以上の成果が得られているので、今年度は、草本を中心とした研究課題である、2-2)アリマキとアルゼンチンアリの草本種による違い、3)緑地の草本植生の管理がアルゼンチンアリに及ぼす影響についての調査を重点的に行い、当初の計画を完遂させる予定である。 以上の研究の進展状況の報告と今後の進め方について、東京農工大の井上真紀博士との会合を設け、アドバイス等をいただく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたアルゼンチンアリの4集団の安定同位体を用いた食性解析が、4集団の分布がこれまでの報告と異なっていたため、次年度に行うことに変更した。当該年度の調査により、神戸港の4集団の分布がはっきりさせ、4集団の食性研究ができる状態が整えてから、次年度に、当初予定の食性解析を行うこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していたアルゼンチンアリの4集団の安定同位体を用いた食性解析を行う予算として計上していたため、当初の計画通り、サンプルの分析の依託費、サンプル採取のための人件費として使用する予定である。
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