2017 Fiscal Year Research-status Report
トロポニンT置換による拡張型心筋症治療法開発への挑戦
Project/Area Number |
16K15184
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
南沢 享 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40257332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤池 徹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20647101)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心筋症 / 遺伝子治療 / 遺伝子異常 / 筋原線維 / トロポニン / 突然死 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は極めて予後不良な若年発症の拡張型心筋症(DCM)に対する根本的治療法を開発することにある。そのため本研究では 「変異型トロポニンTは正常遺伝型トロポニンTの過剰発現によって置換し得る」という作業仮説を、若年発症型DCMモデルマウスを使って検証を試みた。さらに若年型DCMマウスの極めて初期段階(出生直後から離乳期まで)での心筋の構造的・機能的異常を経時的に調べ、若年段階で進行性の病態形成に働くシグナル分子や調節機構の同定を目指し、平成29年度は以下の研究成果を得た。 1)ΔK210-KIマウスにおける周産期心筋障害の解析:平成28年度の結果を踏まえて、ヒト若年型DCMと同様の表現型を有すると考えられるトロポニンTアミノ酸変異(ΔK210)ノックインマウス(ΔK210-KI)(ヘテロ型、ホモ型)と野生型マウスにおいて、その表現型をさらに詳細に調べた。生後1週での心エコー検査の結果では、ホモ型ΔK210-KIマウスでは既に有意に心拡大があり、心収縮能が低下していた。これはANFなどのmRNA発現量増加に一致していた。また、網羅的遺伝子発現解析の結果、代謝系遺伝子群、自律神経系遺伝子群に大きな変化が認められ、RT-PCR法にて確認した。 2)ΔK210-KIマウス生体へのヒト正常型トロポニンT置換実験(成獣への導入):心筋に特異的遺伝子発現をするalphaMHCプロモーターを使い、野生型トロポニンTの過剰発現マウスを作成した。平成29年度では繁殖用マウスを揃えることが出来た。 以上によって、ΔK210-KIマウスは若年発症型DCMのモデルとして有用であり、出生直後から離乳期までの心臓を機能的・構造的な観察をすることによって、これまでに殆ど分かっていない心筋症発症前の段階で、既に多くの代謝因子、自律神経系因子が病態悪化に関わることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の命題である「生細胞内でトロポニンTが置換可能である」ことを検証するために極めて重要な実験と位置づけている、ΔK210-KIマウス生体へのヒト正常型トロポニンT置換実験(成獣への導入)において必要となる、野生型トロポニンTの心筋細胞過剰発現マウスの作成が予定より遅れた。これは初期の胚操作によって得られたマウスの中に一匹もトランスジェニックマウスが生存していなかったために、再度胚操作を繰り返さなくてはならなくなったためである。最終的には心筋細胞特異的なトロポニンT過剰発現マウスを得ることが出来たが、解析に必要な十分な匹数が期限内に繁殖させることが出来なかったため、全ての実験が遅れてしまうことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
I. ラット新生仔心筋細胞へのヒト正常型トロポニンT置換実験を継続する。 ヒト・トロポニンTの発現のためのコンストラクトが出来たため、ラット新生仔培養心筋細胞にリポフェクション法に よって遺伝子導入し、置換効率を検討する。 II. ΔK210-KIマウス生体へのヒト正常型トロポニンT置換実験(新生仔への導入) Iの結果を踏まえ、生細胞においてもトロポニンT置換が可能であることが検証出来次第、本研究の主眼である、DCMモデルマウスの生 体においてもトロポニンT置換が可能であるかを検討する。その方法は新生仔への遺伝子導入(II)と成獣への遺伝子導入(III)の2通 りの方法を試みる。ヒト正常型トロポニンT発現のためのアデノウィルスベクターを作成し、新生仔(生後2日以内)を使った高効率遺伝子導入方法を用いて、ΔK210-KIマウスに正常型トロポニンTを導入する。導入後の心 臓に対して、その効果を判定する。 若年型DCMの極めて初期段階での異常をさらに調べることによって、病態悪化に働くシグナル分子や調節機構を同定から新たな治療手段を検討してゆく。さらに本研究によって筋生理学における新たな実験方法を提供し、心筋線維収縮機構の構築機序の解明にも貢献するだけでなく、極めて予後不良である若年型DCMへの根本的治療法の開発につなげてゆく。
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Causes of Carryover |
(理由)トロポニンT過剰発現マウスを一度、作成したが、トランスジェニックマウスを得ることが出来ず、もう一度、胚操作から行ったため、トロポニンT過剰発現マウスの納品が遅れた。そのために、当初の予定であったトロポニンT置換実験が遅れたため。 (使用計画) 2017年度に出来なかったマウス解析に使用する予定である。
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[Journal Article] Tissue thrombin is associated with the pathogenesis of dilated cardiomyopathy2017
Author(s)
Ito K, Hongo K, Date T, Ikegami M, Hano H, Owada M, Morimoto S, Kashiwagi Y, Katoh D, Yoshino T, Yoshii A, Kimura H, Nagoshi T, Kajimura I, Kusakari Y, Akaike T, Minamisawa S, Ogawa K, Minai K, Ogawa T, Kawai M, Yajima J, Matsuo S, Yamane T, Taniguchi I, Morimoto S, Yoshimura M
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Journal Title
Int J Cardiol
Volume: 228
Pages: 821~827
DOI
Peer Reviewed
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