2017 Fiscal Year Research-status Report
肺腺癌における上皮-間葉移行(EMT)を標的とした早期血清診断マーカーの獲得
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16K15249
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
土屋 紅緒 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (80286385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 上皮-間葉移行(EMT) / 血清診断マーカー / 肺腺癌 / セクレトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮-間葉移行(EMT)を獲得した肺腺癌細胞が周囲に浸潤・転移しやすい微小環境を構築し、抗癌剤や放射線治療抵抗性を示すようになるよりも早い段階で、EMTの可能性を判別できる鋭敏な血清診断マーカーの獲得を目指して検討を行い、以下の結果を得た。 TGF-βを用いて肺腺癌細胞A549にEMTを誘導し、2日目および4日目の培養上清中に分泌されるタンパク質を網羅的に解析した。親株A549細胞が分泌するタンパク質と比較検討することで、EMT獲得に伴い発現が変化するタンパク質の全容が明らかになった。EMT誘導細胞を無タンパク培地で24時間培養して得られたconditioned medium中のタンパク質を濃縮・精製した後、タンパク分解酵素処理を行って得られたペプチド断片0.03μg/μlを用いてショットガン解析を行った結果、4日目では1270個のタンパク質が同定された。これらについて、①親株に比べ2倍以上発現が亢進している ②ペプチド断片数が4以上かつスコアが20以上である ③分泌タンパク質である を条件として全てを満たすタンパク質を「EMT獲得に基づく血清診断マーカー候補」として絞り込んだところ、34個の候補タンパク質が得られ、そのうち15個はEMT誘導2日目から分泌の亢進を認めた。この中には血管新生や抗癌剤耐性、癌細胞の浸潤能亢進に関与するものや癌幹細胞の幹細胞性維持との関連が報告されているものが複数含まれており、治療抵抗性を示し短期間で再発や転移をおこすことが予想される高悪性度患者を早期に見出すことが可能なバイオマーカーの獲得が強く期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
conditioned medium中から細胞が分泌したタンパク質を効率よく抽出、濃縮し、安定して質量分析を行う方法を確立し、「EMT獲得に基づく血清診断マーカー候補」タンパク質34個を獲得することができた。さらにその中からEMT誘導細胞でのみ検出された10個および親株に比べ10倍以上の発現亢進を認めた2個を絞り込み、健常人および肺腺癌患者血清中の発現とstage や予後を含む臨床病理学諸因子との関連の全容を明らかにすることを試みた。解析には当研究グループで確立した血清アレイ解析法(RPPA法)を用いていたが、検討途中でアレイヤーおよびシグナル解析システムをさらに高感度で再現性の高いものに変更したため、反応や検出条件の再設定に予定外の時間を要し、年度内に結果の評価まで至らなかった。しかし、本検討に使用する症例の血清を固相化したRPPA用ガラス基板は既に作成、保存済みであり、また手術例については同一症例の病理保存組織も収集済みであることから、本研究の達成度は当初の予定よりもやや遅れているものの、その成果は期待できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
EMTを獲得した細胞から分泌されるタンパク質のプロファイルを作成し、その中から血清診断マーカーとなる可能性の高い34個のタンパク質を獲得したことから、次年度は計画書に沿って以下のとおり研究を遂行する。1.肺腺癌患者血清および健常人血清中の「候補タンパク質」の発現解析。2.EMTに基づく治療抵抗性予測マーカーとしての有用性の評価。3.患者血清中に存在する、分泌タンパク質に対する特異的自己抗体の解析。具体的には、1. 血清アレイ解析法(RPPA法)を用いて、健常人および治療前肺腺癌患者 (stageⅠ~Ⅳ)血清中における候補タンパク質の発現とstageや予後を含む臨床病理学的諸因子との関連の全容を明らかにする。内部標準として各ガラス基板に合成した候補タンパク質を載せて同時に反応することで半定量的に評価を行う。2.プラチナ製剤による術後補助化学療法後の経過が明らかな肺腺癌患者 (stageⅠ~Ⅲa)の手術前血清中の各候補タンパク質の発現量をRPPA法を用いて相対的数値として表す。この値をもとに候補タンパク質の発現と無病生存期間など治療の奏功性を示す項目との関連を解析し、治療抵抗性予測マーカーの獲得を目指す。3. 自己抗体の検出は、発現量の多寡に応じてRPPA法またはエバネセント法を用いて行う。エバネセント法は検出感度が高く、微量しか存在しない低親和性自己抗体を検出することが可能である。 さらに病理保存組織と血清の両方が得られている症例について、組織におけるEMTマーカーの発現と血中タンパク質および自己抗体の発現を併せて検討することにより、得られた候補タンパク質がEMTの検出や抗癌剤治療抵抗性予測マーカーとして有用であるか評価を行う。 本研究は本学医学部倫理審査委員会の承諾を受けており、検体は原則としてインフォームドコンセントが得られたもののみを使用する。
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Causes of Carryover |
年間を通じて効率よく物品の購入を行ったが、EMT診断マーカー候補タンパク質の合成に際して、年度内に納品のめどが立たずに購入を次年度にまわしたものがあったため、未使用額が生じた。当該試薬は次年度初めに発注して購入する予定であり、本年度の未使用額はすべて次年度の研究費と合わせて試薬など消耗品購入に充てる。
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Research Products
(1 results)