2016 Fiscal Year Research-status Report
ILC2をターゲットとしたアレルギー性疾患の予防法の確立
Project/Area Number |
16K15362
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
茂呂 和世 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, チームリーダー (90468489)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ILC2 / 自然リンパ球 / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギー性疾患の治療はステロイド療法を中心に様々な診療科で進められているが、現在効果的な根治療法は見つかっていない。このような背景の中、アレルギー性疾患への対応は発症後ではすでに遅く、発症前の胎児期に予防することが肝心なのではないかという考え方が小児科領域を中心に広まりつつある。近年、2型自然リンパ球(ILC2)の発見によって、アレルギー性疾患の発症機構にはこれまで知られてきた抗原依存的なものと非依存的なものの2つの経路が存在することが明らかになってきた。 ILC2は様々なアレルギー性疾患において、ILC2はIL-33に反応することで増殖し、さらにIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインを産生してアレルギー症状を悪化させることが報告されている。産婦人科領域におけるILC2の解析は報告されていた無い事から本研究では、子宮や胎盤、胎児におけるILC2の動態とILC2の活性・抑制に関わるサイトカインのダイナミクスを明らかにした後、母体や胎児に影響を及ぼさない認可薬のうちILC2の抑制効果のあるものを探索することで、胎児期のILC2をターゲットとしたアレルギー性疾患の予防法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレルギーは生後まもなく発症がみられる疾患で、一度発症したアレルギーは体内のTh1/Th2サイトカインバランスを2型に傾けることでさらなるアレルギー性疾患を誘導するため、発症後の治療ではなく出生前の予防が重要であると考えられている。ILC2は肺や腸管、皮膚など様々な組織に存在することから喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など多診療領域のアレルギー性疾患への関与が報告されている。 本年度は、子宮、胎盤、胎児におけるILC2の存在を確認し、その表現型、サイトカイン反応性、サイトカイン要求性、転写発現等を明らかにした。また、胎生期にILC2活性化因子を母体内で受け取ることで生後の喘息発症に影響が見られるかについて解析し、母体内のサイトカインに胎盤通過性があるかについて精査した。さらにILC2抑制薬を開発するために既存薬スクリーニングを実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析から、アレルギーの発症は母体内のアレルギー関連サイトカインによるILC2の活性化が影響を与えることが明らかになってきた。そこで、スクリーニングによって最終的に候補に残った既存薬について、投与法(静脈内投与、腹腔内投与、経口投与)と投与量、投与回数を検討する。また投与時期については妊娠前、妊娠前期、妊娠中期または妊娠後期に分けて検討する。検討した条件で妊娠マウスへの既存薬投与を行い、出生した仔が6週齢になるのを待ってからアレルギー性疾患を誘導する。アレルギーモデルとしては抗原依存的なアレルギーを誘導するOVAモデルマウス、抗原非依存的なアレルギーを誘導するIL-33モデルマウス、抗原依存的、非依存的なアレルギーの両方を誘導することが知られるパパインモデルマウスを用いる。予防薬を投与したマウス群と投与していないマウス群で各アレルギーの発症の有無や、発症した場合は重症度の評価を行う。以上の計画から胎児期のILC2をターゲットとしたアレルギー予防法の確立を目指す。
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