2016 Fiscal Year Research-status Report
深部病巣を標的とするTheranosticsに不可欠な新規放射線光学療法の開発
Project/Area Number |
16K15582
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松浦 栄次 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20181688)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 深部病巣 / Theranostics / 光増感剤 / Klotho KOマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、深部病巣を標的とするPETによるイメージング診断およびPET核種に由来するCherenkov光を体内光源とした体内深部でのPhotodynamic therapy(PDT)の実現と融合(Theranostics)である。 平成28年度は、PET核種から放出されるCherenkov光に対して励起可能な光増感剤の探索と評価およびモデルマウスを用いた特異抗体の集積能の評価等を行った。 まず、光により励起されることで活性酸素種の産生能を評価できる蛍光試薬、および発光・蛍光イメージング装置による測定により、ポルフィリン系光増感剤1種を選出した。さらに、選出した光増感剤とPET核種を併用することで、培養細胞に対して細胞傷害を誘導できる可能性があることを確認した。 また本技術の応用として、老化モデルマウスであるKlotho KOマウスにおける展開可能性の基礎検討を行った。血清学的評価により、Klotho KOマウスの血中無機リン酸濃度、カルシウム濃度、およびアルカリホスファターゼ活性は野生型と比較して有意に高い血中環境である一方、脂質代謝に異常は見られないことを確認した。次に組織化学的評価を行い、Klotho KOマウスで観察された動脈および腎臓の異所性石灰化病変部には骨代謝マーカーのほか、3H3抗体やCL15抗体が認識する抗原が発現していることを確認した。Klotho KOマウスの動脈および腎臓では、異所性石灰化病変と骨代謝マーカー、および3H3抗体とCL15抗体の抗原がほぼ同一の場所に存在することを確認した。さらに3H3 scFvを89Zr標識しKlotho KOマウスに投与した後、体内動態を調べた。オートラジオグラフィの結果より、Klotho KOの動脈では野生型よりも放射能が高く集積していることを確認した一方で、腎臓を含むその他の臓器では有意な差は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的、すなわち、Cherenkov光に依存するTheranosticsのための、ポルフィリン系光増感剤を1種類、種々の検討により選出し、この光増感剤とPET核種を共存させておくことで有意な活性酸素種の産生が確認できた。また、培養細胞レベルでも細胞傷害の誘導ができる可能性も示されたことから平成29年度にはCherenkov光を用いたPDTの実証実験を行う。現在までに1種類の光増感剤を選定し検討してきたが、計画に基づき、プロトポルフィリンIXについては平成29年度も引き続き検討する。 3H3抗体(抗酸化LDL・β2グリコプロテインI抗体)がKlotho KOマウスの異所性石灰化病変部へのPET核種の送達に利用可能であることを確認した。組織化学的評価で抗原の存在が確認された腎臓において、89Zr標識した3H3 scFvの集積に野生型との差が見られなかった原因として、低分子型抗体scFvの排出に腎臓が機能しており非特異的な集積が高かったためであると考えられる。腎臓への非特異的な集積を低減するには全長抗体IgGの使用を検討する必要があるが、抗体の分子量が変化することによりクリアランスなど体内動態特性も大きく変化するため、本技術の利用実態に即した検討が必要である。またPETイメージングならびにCL15抗体の使用についての検討も開始しており、平成29年度も継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度にCherenkov光を用いた光増感剤の励起評価とPDTへの応用の可能性について実験方法等は確立できてきている。そのため、平成29年度はこれら確立した方法によりプロトポルフィリンIX等の光増感剤について検討し培養細胞での治療評価を行い最適な光増感剤の決定を行う。次いで、最適化された光増感剤とPET核種を併用し、Klotho KOマウスなどのモデルマウスにおけるPETイメージングや治療評価を行う。
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