2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代型培養技術を駆使したびまん性星細胞腫モデル細胞の樹立
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16K15641
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武笠 晃丈 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90463869)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / 星細胞腫 / IDH遺伝子 / 細胞モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
従来型の培養方法で樹立困難なIDH遺伝子変異を有する神経膠腫の細胞モデルを作成すべく研究に着手した。最近の消化管領域の研究では複数のgrowth factor 投与下にmatrigel内で三次元培養することでオルガノイド培養を行う手法が確立されており、まずはこれを模して、通常の液体三次元培養可能な神経膠芽腫の腫瘍幹細胞株をmatrigel内で培養した。しかしながら様々な growth factorを組み合わせて投与するも、この方法では増殖せず、むしろ従来の液体培地での浮遊培養の方の増殖が良かったため、管腔を形成する消化管細胞と異なりグリア細胞には不向きである可能性が示唆された。 そこで、代替策とし、アストロサイトを通常通り接着培養し、IDH遺伝子変異を有する 神経膠腫が一般に有する遺伝子異常を導入していくこととした。変異IDH1(R132H)遺伝子をクローニングし、レンチウイルスベクターを用いてアストロサイトに導入した。その後、アストロサイトーマで見られ、ALT (alternative lengthening of telomeres) を引き起こすと考えらえるATRXのknock down及びCRISPR/CASによるknock outを行ったが、最終的にcrisisを迎えてしまった。そこでIDH遺伝子変異導入に加え、hTERT, SV40を導入したところ、100継代以上経ても増殖を維持できる細胞を樹立し得た。前述の通りこの細胞はALTではなくTERTの活性化で無限増殖しているという点でアストロサイトーマとは異なるも、同様に樹立困難なIDH遺伝子変異やTERTプロモーター変異のある二次性膠賀腫の性質を模していると考えられた。またIDH遺伝子変異によるエピジェネティックな変化の観察や、IDH変異と抗がん剤によるhypermutator化の解明に有用なモデルと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、過去に様々なグループが取り組むも樹立困難であったIDH遺伝子変異を有する神経膠腫細胞のモデル作成という困難な課題への挑戦である。モデル細胞の樹立は、我々にとっても容易でないが、もし樹立ができれば、特に低悪性度神経膠腫とその悪性転化における病態解明に非常に有用と考えられる。 そこでまず消化管細胞の培養では成功しているmatrigelを使用した三次元培養を用いる方法に着手した。しかし、これまでの結果からは、同方法では、現時点の技術段階ではグリア細胞では樹立困難であること示唆された。さらなる技術革新が必要であり、引き続き検討を行いたい。 そこで、当座の代替法とし、hTERT導入を使用した方法で人のアストロサイトを不死化し、さらに変異型IDH遺伝子変異を導入したところ、IDH遺伝子変異陽性の神経膠腫細胞株を作成し得た。この細胞はwestern blottingによる評価でIDH遺伝子変異が導入されていることが確認された。さらに液体クロマトグラフィーを用いてIDH1R132H遺伝子変異に伴う代謝産物2-hydroxyglutarateの蓄積の検証や、マウス生体内での腫瘍形成能など、低悪性度神経膠腫モデル細胞としての性質につき、検証を行っている。 さらに腫瘍手術切除検体からの 初代培養によるIDH遺伝子変異陽性細胞の樹立も試みている。IDH変異陽性の比較的に低悪性度の神経膠腫切除検体を、膠芽腫からの腫瘍幹細胞樹立に即した条件にて浮遊培養を行っている。ある一定期間は培養可能であるが、長期間の細胞継代が現在のところ困難で有り、技術的な改良が必要と考え検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のようにして作成した神経膠腫細胞モデルを用いて、in vitro 及び in vivo での腫瘍形成能の評価を行う。またIDH R132H遺伝子変異に伴って生じるとされているゲノムワイドの DNAメチル化(Glioma CpG island methylator phenotype)や、ヒストン修飾などといったエピゲノム異常の、IDH遺伝子導入後の経時的変化を解析することで、IDH遺伝子変異によりもたらされる腫瘍化機構の病態と機序解明を行う。 また、この低悪性度神経膠腫細胞モデルを使用し、そこに悪性化関連候補分子の導入または機能抑制を行うことで、これら分子の腫瘍形成や悪性化における機能解析に利用していく。 上述の機能解析と同時に、さらに複数の方法による細胞株樹立を目指していく。一つの方法として、前述のように、IDH遺伝子変異陽性の神経膠腫症例の臨床検体からも、初代培養を行うことで、実際の腫瘍に極力近いモデル細胞の樹立を目指しているが、さらなる技術開発が必要と考える。対策として、手術検体を切り刻んで腫瘍細胞を採取した後に、直接ヌードマウスなどの免疫不全マウスへ xenograft を作成することで樹立に成功した例が報告されており、この方法も取り入れていくこととしたい。また、臨床検体から直接初代培養を行うことが困難であった場合や、長期の維持が困難出会った場合には、臨床検体をiPS化し、これを一定の増殖をさせた後に分化誘導し、モデル細胞を得る方法も考えており、同時に検討を進めたい。 また、前述の三次元培養法においても、これによる樹立を目指して培養条件の検討も行っていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究は、過去に様々なグループが取り組むも樹立困難であったIDH遺伝子変異を有する神経膠腫細胞のモデル作成という困難な課題への挑戦であり、我々にとっても容易でなく、細胞樹立に時間を要しており、その後の樹立した腫瘍細胞の機能検証解析至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
樹立に成功したものから順次、次年度に機能解析を施行する計画となっている。つまり、樹立したIDH遺伝子変異陽性アストロサイトの機能評価として増殖機能評価やメチル化解析を行う。また、マウス細胞からの神経膠腫モデル細胞の樹立や、iPS細胞樹立を介した神経膠腫モデル細胞樹立方法や神経幹細胞を用いた方法を試みる予定で、それら細胞培養に必要な経費として使用する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Saito N. Genetic and epigenetic stability of oligodendrogliomas at recurrence.2017
Author(s)
Aihara K, Mukasa A, Nagae G, Nomura M, Yamamoto S, Ueda H, Tatsuno K, Shibahara J, Takahashi M, Momose T, Tanaka S, Takayanagi S, Yanagisawa S, Nejo T, Takahashi S, Omata M, Otani R, Saito K, Narita Y, Nagane M, Nishikawa R, Ueki K, Aburatani H, Saito N.
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Journal Title
Acta Neuropathol Commun.
Volume: 5
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A combination of TERT promoter mutation and MGMT methylation status predicts clinically relevant subgroups of newly diagnosed glioblastomas.2016
Author(s)
Arita H, Yamasaki K, Matsushita Y, Nakamura T, Shimokawa A, Takami H, Tanaka S, Mukasa A, Shirahata M, Shimizu S, Suzuki K, Saito K, Kobayashi K, Higuchi F, Uzuka T, Otani R, Tamura K, Sumita K, Ohno M, Miyakita Y, Kagawa N, Hashimoto N, Hatae R, Yoshimoto K, Shinojima N, Nakamura H, Kanemura Y, et al.
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Journal Title
Acta Neuropathol Commun.
Volume: 4
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Diagnostic value of glutamate with 2-hydroxyglutarate in magnetic resonance spectroscopy for IDH1 mutant glioma.2016
Author(s)
Nagashima H, Tanaka K, Sasayama T, Irino Y, Sato N, Takeuchi Y, Kyotani K, Mukasa A, Mizukawa K, Sakata J, Yamamoto Y, Hosoda K, Itoh T, Sasaki R, Kohmura E.
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Journal Title
Neuro Oncol
Volume: 18
Pages: 1559-1668
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Molecular pathological analysis on IDH-wildtype adult low-grade gliomas2016
Author(s)
Akitake Mukasa, Koki Aihara, Genta Nagae, Junji Shibahara, Shota Tanaka, Shunsaku Takayanagi, Masashi Nomura, Motoo Nagane, Yoshitaka Narita, Keisuke Ueki, Ryo Nishikawa, Hiroyuki Aburatani, Nobuhito Saito
Organizer
21th Annual Meeting of the Society of Neuro-Oncology
Place of Presentation
Farimont Scottsdate Princess Hotel (Scottsdale, Arizona, USA)
Year and Date
2016-11-19
Int'l Joint Research
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