2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K15683
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
中塚 秀輝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (70263580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前島 亨一郎 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (20549852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | BDNF / TrkB / TrkB isoform2 / Cancer pain relief / gene Therapy |
Outline of Annual Research Achievements |
脳由来神経栄養因子(BDNF)は神経系の正常な初期発生に不可欠の因子である。G.R.Lewinら(2014)は癌性疼痛にBDNFとその特異的受容体であるTrkBの経路が関与していることを示した。また、癌性疼痛を有する患者が全身の疼痛過敏を訴えることはしばしばあるがその原因は不明である。我々はBDNF-TrkBによる疼痛伝達の経路が局所の疼痛に加えて全身の疼痛過敏に関与しているという仮説をたて研究を行った。 TrkBには細胞内リン酸化ドメインを持つもの(TrkB-isoform1:以下 TrkB-1)とリン酸化ドメインを持たないもの(TrkB-isoform2:以下TrkB-2と略)の2種類が存在する。TrkB-2はBDNFを補足する能力を有するにもかかわらずシグナル伝達ができない構造を持っている(Mol Cell Biol,1991)。TrkB-2発現ベクターを脊髄くも膜下腔に投与することで局所の疼痛過敏のみならず全身の疼痛過敏を抑制する効果が期待される。 1)ラット乳癌細胞(MRMT-1)をラット左脛骨骨髄に移植し骨転移癌モデルを作成した。von Freyテストによる疼痛行動は癌細胞移植後1週目から認められた。癌の移植を行ったラットでは健常側の足も統計学的な有意差は認めないものの通常のラットと比較し疼痛行動が出現した。 2)癌細胞移植から3週間経過したラットの両側の脛骨骨髄を採取、BDNFの発現量を定量PCR法で測定すると癌細胞移植ラットでは患側で通常ラットと比較し有意にBDNFが増加していた。さらに健側で有意差はみられないものの通常ラットと比較し増加傾向であった。 3)TrkB2発現ベクターを作成した。癌細胞を移植し1週間たったラットの脊髄くも膜下腔にカテーテルを挿入し、この発現ベクターを投与、その後疼痛行動を評価した。投与後から2日目に疼痛抑制効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統計学的な有意差はみられていないが癌を移植していない足(健側)での疼痛行動が確認でき、さらに定量PCR法でBDNFが増加傾向であることも確認できた。 発現ベクターの作成:発現ベクターの構造は、pCMVscriptを用いCMV promoterの後にTrkBを結合し、さらに以後の解析を容易にするためEGFP-FLAG-Stagを付加した。 発現ベクターをカテーテルを用いて脊髄くも膜腔に投与することで患側(癌細胞を移植した側)肢の疼痛が有意に改善した。さらに健側の疼痛に関しても統計学的な有意差はみられないが改善傾向を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脊髄組織でのベクターの発現を定量PCR法で測定する。また脊髄に投与された発現ベクターによって産生されたTrkB-2タンパクをWestern Blot法で測定する。 2)発現ベクターのかわりにTrkB-2の細胞外ドメイン(BDNF結合部位)に対応するタンパクを用いて鎮痛効果を調べる。
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Causes of Carryover |
疼痛伝達に関与する脊髄中のTrkB isoform1のリン酸化度を測定するためのWestern blot法が遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は29年度交付額と合わせてリン酸化タンパクの分析に使用する予定。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、リン酸化タンパクの抽出時に、Protease inhibitorおよびPhosphatase inhibitorを用いてWestern blotを行う予定であり、この物質の購入を計画している。
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