2016 Fiscal Year Research-status Report
アンドロゲン作用低下を介した精巣腫瘍増悪メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K15695
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
上田 崇 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (50601598)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 晃和 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10381964)
浮村 理 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70275220)
大石 正勝 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (90405316)
上田 紗弥 (伊藤紗弥) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90534511)
本郷 文弥 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80291798)
金沢 元洪 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00468266)
藤原 敦子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20457980)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 精巣腫瘍 / セミノーマ / アンドロゲン / AR / TPH1 / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
疫学的な所見からアンドロゲン作用の低下が精巣腫瘍セミノーマの発癌につながる事が予想されているが、これまでにin vitroやin vivoの実験で調べた報告はない。本研究ではまずアンドロゲン低下がセミノーマの発癌、増悪に関与するかを検討し、最終的にはその分子機構の解明からセミノーマの新規血清マーカーの同定や治療標的の探索を行う事を目的とする。申請者らが行った予備実験の結果、以下の結果が得られた。 1)セミノーマ由来細胞株TCam-2にアンドロゲンを投与すると細胞増殖が抑制された。 2)TCam-2皮下移植モデルマウスに除睾術を行うと腫瘍の増大速度が上がることが観察できた。 これらの結果は疫学的な事象より得られる仮説「ARを介したアンドロゲン作用の抑制がセミノーマの発癌・増悪を引き起こす」を裏付けるものであると考えられる。申請者らはさらに①アンドロゲンを投与したTCam-2と②セミノーマ患者の正常部位と腫瘍部位(10例)よりmRNAを採取しDNAマイクロアレイ解析を行った。本研究ではTCam-2においてアンドロゲン投与により2倍以上発現が上昇し、セミノーマ患者において正常部位と比較して2倍以上発現が低下していた遺伝子群(A群18遺伝子)とTCam-2においてアンドロゲン投与により2倍以上発現が低下し、セミノーマ患者において正常部位と比較して2倍以上発現が上昇していた遺伝子群(B群19遺伝子)のさらなる解析を行う事を目的とする。 H28年度は遺伝子B群の中からTPH1遺伝子に着目して解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は遺伝子B群の中からTPH1遺伝子に着目して解析を行った。 1 リアルタイムPCRによりTCam-2細胞にアンドロゲン投与することでTPH1遺伝子の発現が低下し、セミノーマ患者において正常部位と比較して癌部位で発現が高いことを確認した。さらにTCam-2細胞におけるアンドロゲン依存的なTPH1遺伝子の発現抑制はARノックダウンにより阻害されることが判明し、アンドロゲンはARを介してTPH1の発現を抑制することが推測された。 2 TPH1はセロトニン合成における律速酵素であり、トリプトファンから5-ハイドロキシトリプトファンへの水酸化反応を触媒する。実際にTCam-2細胞においてTPH1をノックダウンすることで、セロトニン合成が低下することが判明し細胞増殖が抑制された。さらにアンドロゲン投与によりセロトニンレセプターの発現が抑制され、セロトニンレセプターノックダウンで細胞増殖が抑制された。抗精神病薬アセナピンがTCam-2細胞のセロトニン下流シグナルを阻害することが判明した。 TPH1はセロトニン合成促進を介してセミノーマ増悪に関与していると考えられ、新規治療標的因子となる可能性が考えられた。また研究内容は米国科学誌Oncotargetに掲載された。以上より当初予定していたセミノーマ増悪メカニズムの一端を解明出来たため、当研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H29年度は遺伝子A群の中からUBQLNL(ubiquilin-like)遺伝子の解析を行う予定である。UBQLNLは精巣特異的な発現を示し(Yuan et al., 2015)、加齢および癌と負に相関することが示唆されている(Kent et al., 2012)。リアルタイムRT-PCRによる発現解析においてUBQLNの発現は正常部位と比較して癌部位で低下していることを観察した。さらにセミノーマ細胞株TCam-2にアンドロゲンを投与することでUBQLNの発現が優位に抑制されることが判明した。H29年度はTCam-2細胞におけるUBQLNL結合因子の解析を介してセミノーマ増悪メカニズムの解明を試みる。
|
Research Products
(3 results)
-
[Journal Article] Androgen suppresses testicular cancer cell growth in vitro and in vivo.2016
Author(s)
Nakagawa H, Ueda T, Ito S, Shiraishi T, Taniguchi H, Kayukawa N, Nakanishi H, Ushijima S, Kanazawa M, Nakamura T, Naya Y, Hongo F, Kamoi K, Okihara K, Ukimura O
-
Journal Title
Oncotarget
Volume: 7
Pages: 35224-32
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-