2016 Fiscal Year Research-status Report
平原ハタネズミを用いた、オキシトシンの単回・継続投与が妊娠胎児へ与える影響の解析
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16K15698
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西森 克彦 東北大学, 農学研究科, 教授 (10164609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹田 省 順天堂大学, 医学部, 教授 (20143456)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 誘発分娩 / 自閉症スペクトラム障害 / 平原ハタネズミ / CRISPR/Cas9 / 浸透圧ポンプ / ペア形成行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠平原ハタネズミに浸透圧ポンプを埋め込み、継続的に任意濃度のオキシトシンを継続的に投与する実験系を確立した。 また、本計画の中心に位置する、新規に開発したOXTR遺伝子欠損平原ハタネズミに関し、この遺伝子に導入された小規模な欠失変異、及びフレームシフト変異により、何れもOXTR機能が完全に喪失されている事を、in vitro実験により証明する事に成功した。行動解析実験系の樹立に関しては、ペア形成行動測定解析系、共感性行動測定解析系(foot shockを元にした慰め行動測定)、ハタネズミ仔マウス(~14 DOB)に対する超音波測定条件確定などの行動計測解析システムを樹立した。また、複数個体による行動のコンピュータソフトによる自動解析系の開発を新たに開始しており、29年度中により誤差の少ない行動解析系が樹立出来る者と予想している。 これまで飼育繁殖していた平原ハタネズミの繁殖効率が、昨年度にかけ大きく悪化したので、昨年7月に米国より新たに12ペアのハタネズミ雄雌を導入した結果、繁殖効率や毛並みなどの概観、CRISPR/Cas9用の受精卵取得効率などが何れも大幅に改善した。 平原ハタネズミ脳内に発現分布するオキシトシン受容体蛋白を容易に検出、又その分布や発現強度を容易に評価するため、受精卵へのCRISPR/Cas9技術の応用によりOXTR遺伝子座へのFlag配列のノックインを試みている。これまでin vitroで合成したmRNAにより供給していたCas9蛋白に付き、新たにrecombinat蛋白を用いることで、効率の大幅な改善を見ており、こうした系の改善により新規遺伝子修飾平原ハタネズミの開発実験を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.妊娠野生型雌平原ハタネズミ胎児へ、OXTを単回、又は長期投与を行った場合の出産後の産子の成長後の社会行動へ与える影響の評価・解析 これまで飼育繁殖して来たハタネズミの繁殖効率が28年度に極めて低下した。繁殖コロニー規模の縮小と、これに伴う遺伝的不均質性の低下が原因と思われる。対策として7月に米国より新たに12ペアのハタネズミ雄雌を導入、これらの導入で繁殖効率の改善に成功した。一方、当研究科の移転(昨年12月に市街地旧校舎から離れた郊外の新棟へ移転)に伴い、蟯虫駆虫薬と殺ダニ剤処理が行われ、その為個体数が減少、又妊娠個体も死産するなど大きな影響を受け、実験が中断してしまった。 一方、行動解析に関しては奈良先端大学の駒井先生の協力によりペア形成行動測定ビデオの自動解析システム構築を進めている。共感性行動解析ではfoot shockを元にした慰め行動測定の計測系を樹立、他に仔ハタネズミ(~14 DOB)に対する超音波測定条件確定に至った。 ハタネズミ脳内のOXTRの検出は、マウスOXTRに対し強い検出力が発表されている抗OXTR抗体をNew York大Froemke教授より入手し試行した。マウスOXTRと極めて相同なハタネズミOXTRへの強い検出力が期待されたが、最良の条件確立には至っていない。 2.CRISPR/Cas9技術を応用した受精卵へOXTR遺伝子座へのTag蛋白挿入によるOXTR分布検出が可能なハタネズミ開発 上記の背景もあり、各種操作したハタネズミ脳内のOXTRの分布や発現強度を容易に検出するためOXTR(+Flag/+)ハタネズミの開発を継続した。しかし上記理由から、受精卵取得用の雌平原ハタネズミ十分確保出来ず、又一時期受精卵取得効率が大きく低下した事より、28年中のOXTR(+Flag/+)ハタネズミには至らなかったが29年度も継続し行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠野生型雌平原ハタネズミ胎児へ、OXTを単回、又は長期投与を行った場合の出産後の産子の成長後の社会行動へ与える影響の評価・解析に関して:まずは、野性型、及びOXTR遺伝子ヘテロ、ホモ欠損平原ハタネズミの増産のため、飼育スケールの拡大に努める。又、過剰投与による胎児マウスの発生への過剰な影響やその停止が危惧され、より詳細な投与濃度の検討により最適実験(投与期間と投与単位)の検討を更に進める。 妊娠平原ハタネズミにオキシトシン投与して出産した仔の成長後の行動解析系の樹立・改善に関しては、既に平原ハタネズミにおいて代表的なペア形成行動解析、共感性行動解析(consolation行動解析)、超音波発声解析に関して実験系の調整が進んでいるが、ペア形成行動解析や共感性行動解析に付いて、ビデオ撮影後、ヒトによる映像観察によりその定量操作を行っており、誤差等を考慮して、ペア形成行動撮影ビデオの自動解析システムによる解析系構築を、奈良先端大学の駒井先生と共同開発していく。 CRISPR/Cas9技術を応用したOXTR遺伝子座へのTag蛋白挿入ハタネズミ開発に関して:妊娠平原ハタネズミにオキシトシン投与して出産した仔の脳への過剰オキシトシンの影響を解剖・病理学的に、且つ容易に観察できるハタネズミ開発に関しては、生殖腺刺激ホルモン投与濃度や、非投与ハタネズミ雌の日齢の検討などをおこなって、その受精卵取得効率の改善に努める。既に、培養受精卵に於いてはFlag配列の挿入を確認しており、29年度中の開発が可能と考えている。 これとは別個に、胎児期オキシトシン処理ハタネズミ脳の社会行動制御脳領域(側坐核、外側中隔、扁桃体内側核など)に関し、神経活性化マーカーのc-fos活性化に付き、抗体染色により活性化領域の変化を解析する。
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Research Products
(4 results)