2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞を用いた血液脳関門モデルによる意識障害関連物質の探索
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16K15761
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嶋津 岳士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50196474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 宣人 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00747149)
梅村 穣 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20743561)
川端 健二 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト, プロジェクトリーダー (50356234)
清水 健太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (60379203)
小倉 裕司 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70301265)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | iPS / 脳血液関門 / 頭部外傷 / セプシス / 熱中症 / 虚血再灌流 / 低酸素 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
iPS細胞から脳血管内皮細胞への分化誘導を行った。今年度は、得られた細胞を用いて、意識障害をきたす病態を脳血液関門の観点から4つの病態に分けて検討した。1. 頭部外傷.iPS細胞由来脳血管内皮細胞にHMGB1を作用させ、24時間後に膜間電気抵抗値の測定を行ったところ、HMGB1を作用させても膜間電気抵抗値には顕著な差は観察されなかった。以上の結果から、HMGB1は脳血管内皮細胞のバリア機能には影響を及ぼさないことが示された。2. 敗血症・重症感染症.iPS細胞由来脳血管内皮細胞にLPS及びIL-6を作用させ、24時間後に膜間電気抵抗値の測定を行ったところ、顕著な差は観察されなかった。以上の結果から、LPSやIL-6は脳血管内皮細胞のバリア機能を低下させないことが示された。3. 低酸素血症.iPS細胞由来脳血管内皮細胞を低酸素・グルコース欠乏状態で培養したところ、バリア機能が著しく減弱した。虚血条件後、再び酸素及びグルコース存在下で培養したところ、バリア機能が速やかに回復した。再灌流条件時にTNF-αを作用させたところ、バリア機能の回復が妨げられた。従って、iPS細胞由来脳血管内皮細胞を用いて低酸素血症を培養皿上で再現した。4. 体温異常(熱中症).iPS細胞由来脳血管内皮細胞を42度条件下で3時間培養した結果、膜間電気抵抗値の上昇が観察された。一方、42度条件下で12時間培養した場合、37度で培養した群と比較して、膜間電気抵抗値の有意な低下が観察された。以上の結果から、短時間の高温(42度)は、バリア機能の増強に働き、長時間の高温はバリア機能の破綻を引き起こすことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者の川端らによるiPS細胞由来脳血管内皮細胞により、低酸素血症、虚血再灌流障害モデルの作成が進んだため論文作成を行えた(Biochem Biophys Res Commun. 486 2: 577. 2017)。また、熱中症に関しても学会報告を行えたため(日本薬学会第137年会)、進行は順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
外傷、感染症、低酸素血症(心停止後)、肝不全、熱中症で意識障害を生じている時の患者検体の血清などの検体を平成28 年度と同様にin vitro の血液脳関門モデルを用いて透過性の評価を行う。 前年度での透過性に変化をきたす物質のプロファイルを参照し、どの物質が透過性の変化に対して最も寄与しているかを検討する。 血液脳関門モデルの透過性の変化に関与している候補物質を用いた動物実験を進めると同時に、その物質を阻害することが治療法になりうるかどうかを探索研究として行う。
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Causes of Carryover |
一部で当初予定していた実験費用に差異が生じたため、今年度必要になると予想していた経費の一部を今後の段階で使用することが必要になったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おおむね当初の実験計画の方向に沿って今後の研究を進めるが、今年度までの結果を踏まえて細かい点で作業の進め方に関して変更を加えた形で実験を行なっていく。
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Research Products
(3 results)