2018 Fiscal Year Research-status Report
訪問入浴を利用する要介護高齢者の皮膚のアセスメント指標と入浴ケアに関する研究
Project/Area Number |
16K15969
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
林 みつる 関西医科大学, 看護学部, 講師 (20300402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 忍 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (00334178)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者 / ドライスキン / 皮膚アセスメント / 角層水分量 / 表面皮膚温 / 下肢冷感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当該研究の基礎的位置づけとなる、ドライスキンを呈した高齢者の皮膚アセスメントの指標を検討するために、下肢冷感や皮膚温との関連性を分析した。尚、研究成果は第24回学術集会にて演題発表予定である。 【方法】介護保険施設に入所中の要介護高齢者から協力を得た。<測定方法>皮膚の状態として角層水分量・水分蒸散量[下腿前面]と皮膚温[足背部]を測定した。<分析方法>足背皮膚温をもとに参加者の平均値より低値の者[A群]と高値の者[B群]の2群に分類し、Mann-Whitney testで比較した。有意水準は5%未満とした。<倫理的配慮>まず施設責任者に研究の説明を行い、次に研究参加者(被験者)に口頭と書面で研究の主旨や倫理的事項を説明し意思を確認したうえで協力同意を得た。測定には約25分程度要するため、体調や気分の変化、時間的拘束に関する苦痛の訴えに留意して実施した。 【結果】参加者は21名(男性6名・女性15名、平均年齢81.4±7.3歳、平均介護度3.1)であった。測定環境は室内温度23.4±0.7℃・室内湿度29.8±5.4%であった。下肢冷感[主観]のある者は9名(42.9%)、ない者は12名(57.1%)であった。研究者の触知と一致しない者は5名いた。冷感の有無による皮膚温に有意差は認めなかった。皮膚の状態は、右下肢;A群(11名)角層水分量33.0±7.0%・水分蒸発量5.6±2.0g/hm2、B群(10名)角層水分量23.7±6.5%・水分蒸散量5.3±1.5 g/hm2、左下肢;A群(13名)角層水分量34.3±8.6%・水分蒸散量6.1±3.0 g/hm2、B群(8名)角層水分量27.5±4.2%・水分蒸散量4.5±2.1g/hm2であった。両下肢において角層水分量は群間に有意差を認めた(右;p=0.01,左;p=0.02)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、最終年度であり、当該研究の段階としては、実態調査を実施し訪問入浴サービスを利用する要介護高齢者の皮膚の特徴と(ドライスキンを助長しない)入浴ケアについて考察することが目標であった。 ドライスキンを呈する高齢者のスキンケア(入浴ケア)を検討するための基礎的位置づけとして皮膚のアセスメント指標を確定するために予備測定調査を実施した。しかし、予備測定調査の分析結果は仮説を立証するものとはならなかった。そのため、研究方法(パラメータの見直し)や分析方法の再検討を行い、研究計画を修正した。 また、研究対象者(被験者)を在宅療養中の要介護高齢者としていることから、獲得までの手続きに困難な条件や状況があり、本年度の到達目標に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(補助事業期間延長承認)であるが、最大目標到達レベルの修正が必要な状況にある。ドライスキンを呈する要介護高齢者への適切な入浴ケア[スキンケア]を提案するという最大目標に対し、現段階の到達目標としては、視診や触診から得られる情報と皮膚生理機能との関連性に着目し、ドライスキンを呈する要介護高齢者の皮膚の特性と皮膚アセスメント指標を明らかにすることに修正する。研究方法は、要介護高齢者の皮膚の特性を明らかにすることを第一義として、皮膚乾燥のメカニズムの視点から季節や生活環境からの影響を考慮し、データ収集は暫定的でなく縦断的に設定する。また、年齢による比較によって要介護高齢者の皮膚の特性が明らかになると考えられるため、被験者の年齢層を階層的に設定する。 【残された課題】 居宅介護支援事業所への訪問を重ね、入浴ケアの意義、サービスの質の向上をめざす観点から研究への理解を深めて頂けるよう試みたが、入り口の扉がなかなか開かない状況があった。人間関係の形成を突破口と考え取り組んできたが、時間や期間が限られた状況では限界もあった。 在宅療養者を対象とする場合、研究への理解や活動の協力が得られ難いことが考えられる。本研究は、研究者が皮膚のコンディションを測定するために測定器を持ち込んで測定する必要がある。事業所からするとサービスの評価であり、被験者からすると馴染みのない人が自宅に入って器械で何かすることであり、警戒心をもっても仕方ない。基礎的研究を実施し、アセスメント指標を確立し、その検証を実施するなど、順をおって確実な研究をすすめる。その研究実績の積み重ねを在宅で療養中の要介護高齢者とするケアの評価や改善に役立てるように取り組みたい。
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Causes of Carryover |
予備測定調査の分析結果が仮説を立証するものとはならなかったことから、研究計画の修正が必要となり、研究進度が滞った。 研究計画の修正により、パラメータの追加にともなう器機の購入(物品費)、測定方法の変更にともなう被験者数や測定回数の拡大に伴う調査費(旅費、謝金、人件費)が必要となる。 尚、目標・計画の修正により、データ収集は一所へ被験者に集まってもらう形で測定を行うことができるため、環境(温度・湿度)が調整できる場所[会議室レンタル]を借用するなどして、場所や日時の調整を工夫して、効率的な計画を立てる。本年度は予備測定調査の研究成果の発表を計画している。すでに演題発表が決まっており、そのための旅費が必要となる。
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Research Products
(1 results)