2016 Fiscal Year Research-status Report
宿主個体群遺伝構造に応じた新興病原ウイルスの進化プロセスの解明
Project/Area Number |
16K16203
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
内井 喜美子 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (90469619)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新興感染症 / 環境DNA / コイヘルペスウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年世界的に問題となっている野生生物新興感染症は、人為拡散によって同一の病原体が複数の宿主個体群に同時に導入される。そこで本研究では、宿主個体群間の遺伝的構造の違いに応じた病原体の進化プロセスを、コイを宿主とする新興病原体コイヘルペスウイルスをモデルとし、定性的かつ定量的に評価することを目的とした。 2016年度は、宿主個体群の遺伝的構造を、環境DNA(水などの環境媒体に含まれる、そこに生息する生物由来のDNA)分析を用いて評価する手法の開発を行った。日本には、コイヘルペスウイルス抵抗性の低い日本在来系統のコイと、抵抗性の高いユーラシア大陸産の外来系統のコイが生息している。そこで、宿主個体群の遺伝的構造を評価するマーカーとして、在来遺伝子型と外来遺伝子型を判別する核DNA上の一塩基多型(SNP)遺伝子座を選定し、環境水より抽出した環境DNA試料を用いて、在来/外来遺伝子型頻度を定量するための手法の検討と開発を行った。従来の環境DNA分析は、環境水中に存在する希薄なDNAを検出するため、1細胞あたりのコピー数が多いミトコンドリアDNAをターゲットとしてきた。しかし、本研究では、1細胞あたり1コピーしか存在しない核遺伝子を検出する必要があったため、まず、環境水から高濃度の環境DNAを得るためのろ過濃縮法を確立した。さらに、SNPを特異的に検出するDNA-RNA-DNAプローブを用いたリアルタイムPCRにより、在来/外来遺伝子型頻度を定量的に解析する手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境DNAを用い、宿主個体群の遺伝的構造を迅速かつ簡便に推定する手法をほぼ確立した。また、コイヘルペスウイルス試料は既に得られているため、今後ウイルスの遺伝変異の解析を速やかに開始することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の研究により、宿主個体群の遺伝的構造を推定する環境DNA手法をほぼ確立した。既に得られているコイヘルペスウイルス試料を用い、ウイルスの遺伝変異の解析を進めることにより、本研究の目標である、宿主個体群遺伝構造に応じた病原ウイルスの進化プロセスの評価を実現することができると考えられる。
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Causes of Carryover |
次年度に使用が見込まれる研究費を確保するため、当該年度に予定していた遺伝子解析の外注を次年度に一括して行うことにより、外注費の抑制を行った。また、学会出張や調査出張の日程を短縮することにより、旅費の抑制を行った。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に必要となる消耗品費や遺伝子解析の外注費として適切に使用する。
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