2017 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of the genetic structure of a host species on the evolution of an emerging pathogenic virus
Project/Area Number |
16K16203
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
内井 喜美子 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (90469619)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 野生生物感染症 / 新興感染症 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
近年世界的に問題となっている野生生物新興感染症は、人為拡散によって同一病原体が複数の宿主個体群に同時に導入される。そこで本研究では、宿主個体群間の遺伝的構造の違いに応じた病原体の進化プロセスを、2003年に日本に導入された、コイを宿主とするコイヘルペスウイルス(CyHV3)をモデルとし評価することを目的とした。 CyHV3への抵抗性は、日本在来系統のコイで低く、ユーラシア大陸産の外来系統では高いため、宿主個体群の遺伝的構造の評価には、在来/外来遺伝子型を区別するマーカーを用いた。2016年度は、環境DNA(水に含まれる生物由来のDNA)を用いて宿主個体群遺伝構造を推定する手法の開発を行った。在来/外来遺伝子型を判別する核DNA上の一塩基多型(SNP)遺伝子座を選定し、SNPを特異的に識別するDNA-RNA-DNAプローブを用いたリアルタイムPCRにより、環境水より抽出した環境DNA中の在来/外来遺伝子型頻度を定量的に解析する手法を確立した。 2017年度は、宿主個体群遺伝構造解析のための環境DNA手法の野外への適用を進めるとともに、CyHV3の遺伝解析を行った。宿主遺伝構造解析においては、環境DNA手法により水域間で遺伝構造の差異を検出することに成功し、本手法の野外における有効性が示された。CyHV3の遺伝解析においては、CyHV3導入から数年内は、対象とした遺伝子については水域間で変異は見られなかった。導入10年後以降においては、環境水から十分量のCyHV3を回収することが困難であったため、一つの遺伝子のみ解析した結果、水域間での遺伝変異は見られなかった。 研究期間中に宿主個体群遺伝構造に応じたウイルス進化の差異を評価することはできなかったが、環境DNA手法を用いた宿主遺伝構造解析の有効性が示されたことは重要な成果となった。今後、宿主-病原体相互作用を解析する上で、宿主個体群遺伝構造解析を迅速に実施する方法として、環境DNA手法の活用が期待される。
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Research Products
(5 results)