2016 Fiscal Year Research-status Report
廃プラスチックマテリアルリサイクルによる排ガスの大気化学反応の究明と処理法の検証
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16K16207
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
水越 厚史 近畿大学, 医学部, 助教 (50520318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プラスチックマテリアルリサイクル / オゾン / ホルムアルデヒド |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な社会のために資源のリサイクルは不可欠であり、効率の良い安全なリサイクル技術の開発が望まれる。プラスチックマテリアルリサイクルにおいては、廃プラスチックの溶融工程において多量の化学物質が発生する。これらがリサイクル施設から排出されると、直接的に、あるいは、大気化学反応を経て有害物質となり、施設付近での健康被害が問題となる可能性がある。したがって、本技術を推進するためには、影響調査と適切な対策が必要と考えられる。そこで本研究では、プラスチック溶融工程における発生物質に関する実験、調査を行い、対策技術を確立することを目的とした。 本年度は、プラスチック溶融時発生物質と大気化学反応による変化について、実験により検証した。大気化学反応として、光化学オキシダントとの反応を想定し、溶融時排ガスにオゾンを混合して生成する物質を測定した。まず、溶融時排ガス中の化学物質の経時変化を測定した。低密度ポリエチレン(LDPE)を管状炉により空気を流しながら200℃で溶融した。発生物質の濃度は、各種モニタリング装置を使用して、総揮発性有機化合物(TVOC)、オゾン、PM2.5、ホルムアルデヒドの経時変化を測定した。その結果、溶融開始後からTVOC濃度の上昇が確認され、20分経過後にオゾンとPM2.5、ホルムアルデヒドの濃度が上昇した。次に、オゾン等発生前の溶融初期(溶融後10分間)の排ガスをサンプリングバッグに採取し、オゾン(100ppb以下)を反応させたところ、ホルムアルデヒド濃度の上昇が確認された。以上の結果から、溶融時間が長い場合、オゾンやPM2.5、ホルムアルデヒドが発生することが示唆され、溶融初期に発生したVOCは大気中のオゾンと反応して、ホルムアルデヒドを生成する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、廃プラスチック溶融時排ガスとオゾン等の大気化学反応の模擬実験を行い、生成物質の確認をすることを目標とし、プラスチックを溶融する管状炉と発生物質をモニタリングする各装置を組み合わせた実験系を確立した。モニタリング装置として、TVOC、オゾン、PM2.5、ホルムアルデヒドのモニターを使用した。また、大気反応を模擬するため、オゾンランプを用いて低濃度オゾンガスを調整し、サンプリングバッグ内で反応させた。その結果、プラスチック溶融時発生物質とオゾンとの反応によりホルムアルデヒドの生成の可能性が示された。また、当初想定していなかったが、プラスチック溶融時発生物質の経時変化を追うことにより、オゾンやPM2.5、ホルムアルデヒドの生成も確認された。今後は、精密分析により詳細な成分についても把握していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度で明らかになったプラスチック溶融時発生物質及びオゾンとの反応による生成物質の量をもとに、シミュレーションモデルを用いて大気中での濃度の時間的、空間的分布を推算する。また、実際にフィールド調査を行い、推算値との整合性を確認する。さらに、プラスチック溶融時発生物質及び生成物質を処理するための技術として、湿式酸化促進法を用いて、除去の可能性について検証する。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降の分析のための費用として使用する予定である。
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