2016 Fiscal Year Research-status Report
市民科学リテラシーの向上に向けて:認知科学的手法に基づく高校教育の解析
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16K16307
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡本 紗知 九州大学, 基幹教育院, 助教 (70769067)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 科学教育 / 教科書 / 中等教育 / 科学リテラシー / 生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本成人の科学リテラシーは、他の先進諸国と比べて著しく低い。しかし、この現状は問題視されてはいるものの解決には至っていない。また、そもそも現行の学校教育は科学リテラシーの習得を保証するのかという疑問もある。そこで、国内外の高校教育が科学リテラシー習得にどの程度寄与するかを解明することを目的として本研究を実施した。 本研究では、まず高校生物の教科書を対象として、科学リテラシー習得につながる要因の有無を統計学的手法に解析した。具体的には、国内の高校生物の教科書(3出版社)から設問を抽出し、Bloom’s Taxonomyに基づき各設問を分類することで、各設問の求める思考スキルのレベルを調査した。さらに、各設問が生涯教育をどの程度促進するかを把握するため、その日常生活および科学の暫定的性質との関連を調べた。また、成人の科学リテラシーが高いことで知られるカナダの教科書でも同様の解析を行った。これらの結果を比較する事で、日本とカナダの高校教育がどの程度科学リテラシーの習得を促進するかを検証した。 その結果、まず思考スキルの解析から日本の高校生物の教科書の設問の60~80%がTaxonomyの第1段階の知識レベルを、10~30%が第2段階の理解レベルを問い、高次認識能力(応用、統合、評価)を問う設問は皆無であることが判明した。一方、カナダの教科書は6段階全てを5~30%の割合で含んでいることも明らかとなった。また、生涯教育を促進すると考えられる要因(日常生活・科学の暫定的性質との関連)についても、日本の教科書と比較してカナダの教科書でこれら要因に関連する設問が多く見られ、その設問数間には有意差があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた調査をすべて完了した。来年度は、計画通り研究の総括および発表を行い、また投稿論文としても発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査が予定通り進んでいることから、来年度は研究の総括および発表を予定している。
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