2016 Fiscal Year Research-status Report
中国古典詩の受容と継承に関する研究~六朝貴族文学の展開を中心に~
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16K16811
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石 碩 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (20732689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 謝チョウ(月+兆)詩研究 / 李白と謝チョウ(月+兆) / 謝チョウ(月+兆)詩受容史・展開史 / 中国古典詩の受容と継承に関する研究 / 六朝詩と唐詩の比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、題材・表現・思想などの方面から、唐宋以降における「謝チョウ(月+兆)の文学」の受容と展開の情況を調査し、 謝チョウ(月+兆)の文学に対する理解と、チョウ(月+兆)の詩人像が確立されていく経緯を明らかにした。 主な研究成果として、『全唐詩』『唐宋史料筆記』、歴代の詩話・詩論などの資料から、謝チョウ(月+兆)を代表する詩句の後世における受容と展開の状況を調査し、その背景に李白による詩句のイメージの改変があったことを指摘した。この研究では、謝チョウ(月+兆)の一詩句の受容状況にとどまらず、中国古典詩が伝統性を獲得してゆく経緯を考察し、一事例として示している。当初の計画では、平成28年度は唐宋における受容状況のみを明らかにする予定であったが、元明清詩や詩話・詩論も調査・分析の対象に加え、より全面的な受容史・展開史研究を行うことができた。 さらに、今年度の研究により、六朝詩人と唐詩人の比較研究の重要性が再認識された。 なお、平成28年度の研究成果は、9月に中国復旦大学で開催された国際シンポジウム「東亜視閾中的中国古典文献與文学学術検討会」にて、「從李白到謝チョウ(月+兆):當塗青山的文學地理景觀考察」の題目で発表を行い、また10月に日本中国学会『日本中国学会報』第68集に「李白と謝チョウ(月+兆)」再考 ――「澄江浄如練」の受容と展開」と題する査読論文が掲載された。 さらに、当初の予定より研究が進み、また一定の成果を収めることができたため、10月に博士学位申請論文「謝チョウ(月+兆)詩の研究――唐代における受容とその展開を中心として」を早稲田大学に提出し、1月の公開審査会を経て、2月に博士学位(文学)を授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は唐宋における受容状況のみを明らかにする予定であったが、調査・分析の段階で、謝チョウ(月+兆)の具体的な詩句の受容・展開を考えるにあたり、その通史的な流れを把握する必要性を痛感し、その結果、元明清詩や詩話・詩論も調査・分析の対象に加えることになった。 調査・分析において、なお不足する部分はあるものの、今年度の研究により、比較的全面的な謝チョウ(月+兆)の受容史・展開史研究を行うことができ、当初の計画以上に進展することができた。 また、今年度の研究により、謝チョウ(月+兆)詩の受容・展開において、唐代および唐詩人が大きな役割を果たしていることが明らかとなり、またこの見方を補強する研究成果をあげることができたため、当初の計画を繰り上げて、研究成果を博士学位申請論文としてまとめ、これを早稲田大学に提出し、博士学位(文学)を授与された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、唐~明清期の詩話・詩論・学説の中に現れた謝チョウ(月+兆)の評価状況を補足的に調査し、「謝氏の文学」の中国文学史における位置付けを明らかにする。その際、謝氏のみならず、南朝詩全体に対する評価の変遷にも着眼し、謝氏と他の南朝詩人(陶淵明・飽照らを予定)との比較も視野に入れて分析を進める。 また、平成28年度の研究で再認識された六朝詩人と唐詩人の比較研究を進め、中国古典詩の広まりとその特徴についてさらなる研究を行う予定である。特に明清期に多く刊行された六朝詩人の別集・選集は、当時の唐詩流行と密接な関わり合いがあると予想されるため、注目して研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、研究成果を博士学位申請論文にまとめる準備を優先したため、従来予定していた研究を行うために必要な物品の調達を行うことができなかった。また、科研費を利用した国際学会参加もかなわなかったことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、昨年度に行えなかった物品の購入と、夏に北京で開催が予定されている国際学会への出張費、また、従来予定していた中国での資料調査などに使用する予定である。
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