2017 Fiscal Year Research-status Report
中国古典詩の受容と継承に関する研究~六朝貴族文学の展開を中心に~
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16K16811
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石 碩 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (20732689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 謝チョウ(月+兆)詩研究 / 謝チョウ(月+兆)詩受容史・展開史 / 敬亭山 / 謝チョウ(月+兆)像の変遷 / 中国古典詩の受容と継承に関する研究 / 六朝詩と唐詩の比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、主に①謝チョウ(月+兆)の文学とその展開および②後世における謝チョウ(月+兆)の人物像の分析を行った。 ①では、謝チョウ(月+兆)が見出した「敬亭山」という文学的素材をもとに、そのイメージや後世の文学に与えた影響などを分析した。その結果、南朝当時は「敬亭山」は民間信仰と結びついた霊山として捉えられていたのに対し、李白の文学で用いられることにより、宣城という都市を代表する名勝地へと変化していったことを指摘した。 ②では、謝チョウ(月+兆)の呼称を粒さに分析し、それぞれの持つ意味合いについて分析を行った。その結果、謝チョウ(月+兆)は李白の愛好を経て宣城という特定の場所と結びついて認識され、さらに中唐の詩人らの愛好を経て、そのイメージを展着させていったことを明らかにした。 平成29年度の研究成果は、まず前年度の成果を「從李白到謝チョウ(月+兆):當塗青山的文學地理景觀考察」という題目で論文にまとめ、四川大学中文系新国学編輯委員会刊行『新国学』第十四巻に投稿し、掲載された(5月)。また、科学技術振興機構「Science Portal China:文化の交差点」にて、「「志 青山に在り」から「人間 到る処 青山有り」へ―李白、蘇軾、釈月性」と題してコラムを執筆した(5月)。さらに、北京大学で開催された国際シンポジウムにて「敬亭山的印象」の題目で研究発表を行った(9月)。また、山形大学にて開催された第28回中唐文学会において、「敬亭山の印象 ――謝チョウ(月+兆)から李白へ」の題目で研究発表を行った(10月)。さらに、前年度に学位授与された博士論文のうち、未発表箇所を「謝チョウ(月+兆)像の確立をめぐって――李白から中晩唐へ」という題目で論文にまとめ、早稲田大学中国古籍文化研究所編『中国古籍文化研究 稲畑耕一郎教授退休記念論集』(東方書店)に投稿し、掲載された(3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、唐~明清期の詩話・詩論・学説の中に現れた謝チョウ(月+兆)の評価状況を補足的に調査し、「謝氏の文学」の中国文学史における位置付けを明らかにすることを目標としていた。同時に、前年度の研究で重要性を認識した六朝詩人と唐詩人の比較研究を進め、中国古典詩の広まりとその特徴についてさらなる研究を行う予定であった。この二つの目的を達成するため、本年度は中国安徽省に位置する「敬亭山」という中国古典文学において重要な意味合いを持つ詩跡を対象とし、この一地名が謝氏の文学に登場した背景、また唐代に特定の詩人・李白によってイメージを変え、その後の文学に根付いていったことを明らかにした。さらに、謝チョウ(月+兆)の呼称を研究することで、その後世における評価と謝チョウ(月+兆)の人物像の変遷を明らかにした。 また、平成30年度の研究計画の前段階として、日中における詩語の使用状況の違いを論ずるために、「青山」という語をテーマとして、謝チョウ(月+兆)(六朝)・李白(唐)・蘇軾(宋)そして釈月性(日本江戸)の詩中における用法を分析し、その変遷をたどった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度に引き続き、謝氏の文学およびその展開の状況について研究を進めていきたい。特に、前年度の研究成果によって明らかになった南朝貴族の江南一帯の詩跡形成における役割をさらに掘り下げ、そうして形成された詩跡が唐代以降どのように定着し、新たな意味合いを持つようになるのか、という問題について取り組む予定である。 また、平成29度は中国から日本へ「青山」という詩語の持つ意味の変化について分析し、コラムを執筆したが、平成30年度はこの内容を更に推し進め、本研究のテーマでもある日中の文学観の変遷について研究を進めたい。 さらに、当初の予定通り、近30年来の謝チョウ(月+兆)関連研究を調査・整理し、謝チョウ(月+兆)詩研究の総括としたい。また本研究テーマの研究成果をまとめ、科学研究費助成事業の研究成果公開促進費などを利用し、成果物として出版する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、9月に国際シンポジウムに参加発表したが、当初は10月に隔年開催される国際学会へも参加を予定していた。しかし他の学会参加との兼ね合いから、赴くことができなかった。また、物品の調達も予定より遅れたために、次年度使用額が生じた。 平成30年度は、昨年度に行えなかった物品の購入と、従来予定していた中国での資料調査および学会出張に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)