2018 Fiscal Year Research-status Report
廃藩置県をめぐる日朝双方の対応を軸に読み解く近代日朝関係の成立
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16K16917
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Research Institution | Maizuru National College of Technology |
Principal Investigator |
牧野 雅司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10754301)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 朝鮮 / 対馬藩 / 書契 / 外交文書 / 外務省 / 倭館 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、まず1871年から1874年までの『東莱府啓録』に記されている渡航船と所持していた外交文書の記録(1871年は63件、1872年は53件、1873年から1874年初旬で107件、合計223件)を全て整理し、来港する日本船の様子とそれに対する朝鮮側官吏の様子とを整理した。また、そのデータを長崎県立対馬歴史民俗資料館所蔵の史料によって補強を行い、朝鮮側史料ではわからない外交文書の具体的な様子を含めて明らかにした。その結果、朝鮮側が全ての異例を排除しようとしているのではなく、自らが作り出す外交体制の維持に必要か否かという基準で受容・排除を行っている様子を明らかにした。この結果は、これまで史料がないために不明とされてきた朝鮮側の日本に対する外交姿勢を明らかにした点で、研究史上意義のあるものである。ここで導き出した結論は、10月7日に行われた朝鮮学会大会において報告を行った。 また、1月には慶應義塾図書館において史料調査を行い、当館所蔵の対馬宗家文庫史料の写真撮影を行った。当館の史料は明治初年の対馬藩の動きがよくわかるものが多く、国会図書館所蔵の史料では見えてこなかった1871年以降の藩主や倭館における対馬藩士の動向、そして対馬や倭館に渡った外務省官員とのやりとりの様子などがよくわかる史料が含まれていた。廃藩置県前後の動きを明らかにするのに非常に有力な手がかりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は『東莱府啓録』の記録の整理を中心として作業を行い、その成果を朝鮮学会大会で報告した。このなかで、1871年から1874年までの倭館での様子を明らかにすることに成功したものの、1872年に発生した館倭[手偏に闌]出(日本人が倭館から出て東莱府へと押しかけた事件)については詳しく検討するに至らず、多くの論点を積み残す結果となった。そのため、大会報告の内容に館倭[手偏に闌]出についての検討結果を入れ込む必要が生じ、大会報告の内容を活字化するに至っていない。また、休館している長崎県立対馬歴史民俗資料館の史料調査を行うことができず、外交文書作成の過程の解明という点では遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は本研究の最終年度として、まず昨年行った朝鮮学会大会の報告内容を活字化することを目標とする。また、昨年実施した慶應義塾図書館での史料調査の結果発見した史料の内容を精査し、1871年から1872年の日朝間の様子、特に倭館での両国官吏のやりとりの復元を行う。この結果を活字化することにより、本研究に一つの区切りを付けたい。また、今年度から長崎県立対馬歴史民俗資料館が再開するので、史料調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた長崎県立対馬歴史民俗資料館での史料調査が、当館の改装工事によって実施できず、旅費を支出することができなかった。また、校務の多忙化により他機関への史料調査も実施することが困難であったことも要因に挙げることができる。一方で、今年度は長崎県立対馬歴史民俗資料館が再開されるので、史料調査を実施する予定である。
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