2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Approach based on the Property Law toward Enviromental issues
Project/Area Number |
16K17040
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
原田 一葉 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (10771280)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は理論上の問題に主眼をおいていることもあり、初年度に集中的に情報収集を行った結果、現地調査よりも文献分析が有用であることが判明したため、文献分析に主眼をおいて研究を実施した。 まず、米国における動向については、州法レベルでの判例分析及び学説の検討が有益であった。同国では多くの州において公共信託理論が採用されていることが知られている。この公共信託理論は、本研究課題がテーマとしている環境媒体における財産権的アプローチの具体化といえるものであり、従来、財産権が設定されてこなかった環境媒体を財として捉え、その管理を市民から信託された州の権限とするものである。州憲法によっては大気を公共信託理論における対象に含めるところがあること、また、判例上認容されるに至ってはいないが、気候変動問題に公共信託理論が適用されると主張して政策形成訴訟を提起する取り組みが存在していることも明らかになった。 次に欧州の動向についても判例・学説の分析を行った。温室効果ガス排出削減のための排出枠取引制度が導入され、定着してきたところである。EUレベルでの同制度について欧州司法裁判所から出された判決及び英国における一部の判決の検討を通し、排出枠は「一定基準値を超えた温室効果ガスの排出をした場合の制裁を免れる」ということを本質的内容とする財産権であると構成することが支配的な見解であることが明らかになった。このように解することが、大気という環境媒体を財産権として捉える仮説とどのような関係に立つかを整理することは今後の課題ではあるが、温室効果ガスの排出は、大気の利用の一形態であることは明らかであるため、両者は矛盾することはなく、むしろ親和的な関係に立つと解することができよう。 これらの検討の結果を整理し及び日本法に対する示唆は、「排出枠の法的性質の更なる検討」として提出予定の博士論文として取り纏める。
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