2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K17042
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
黒坂 則子 同志社大学, 法学部, 教授 (60441193)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土壌汚染 / スーパーファンド法 / ブラウンフィールド / 土砂条例 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、土壌汚染問題及び土地利用規制のあり方について、日米の法規制を網羅的に研究し、日米における包括的な土地利用をめぐる環境規制のあり方を模索することを目的としたものである。 平成29年度は、昨年度のアメリカにおけるヒアリングも踏まえ、アメリカにおける土壌汚染浄化政策を中心に研究した。具体的には近年におけるスーパーファンド法上の費用負担に関する判例を中心に検討し、これらの判例が州の土壌汚染浄化政策に与える影響を中心に考察し、これを同志社法学68巻7号543頁(2018年)に公表した。この裁判例としては、例えば、州の監督のもと、汚染サイトを自発的に浄化した潜在的責任当事者が、他の潜在的責任当事者に浄化費用を求償することができるのか、スーパーファンド法上の根拠条文が問題となったものや、州との和解に従って浄化作業を実施した者のスーパーファンド法上の請求権が問題となったものがある。これらの判例は、これまで展開されてきた州の積極的な土壌汚染浄化政策に直接的な影響を及ぼすことがあるため、注目されるものである。 また、土地利用のあり方を考えるうえで参考となるわが国の裁判例、具体的には①横浜市路上喫煙禁止条例に基づく過料処分等の取消請求事件、②土地改良事業と訴えの利益が争点となった事例、③地方公共団体の担当職員が小規模住宅地積を過小に認定したことにつき、国家賠償責任が認められた事例などについても検討し、それぞれ公表した。なお、土砂埋立て等の規制に関する条例の現状と課題については、これまでの研究成果をまとめ、学会報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究計画の主要分野といえるアメリカの土壌汚染に関する近年の裁判例の動向を研究し、公表することができた。これまで研究成果の少ない、アメリカの連邦と州との規制権限の問題と近年の裁判例が州の政策に与える影響に焦点を絞って、詳細な検討を加えることができた。また、わが国の土地利用に関する裁判例も研究することができた。従って、アメリカの土壌汚染問題につき論文を公表でき、また他の判例評釈など、研究成果の一部を雑誌に公表できたことが、研究がおおむね順調に進捗していることのひとつの証左といえる。以上のように、おおむね当初の研究計画通りの進捗状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、すでにアメリカの土壌汚染問題については、詳細な検討を加えたため、次年度においてはわが国の土壌汚染問題に関する判例や、土地利用のあり方と環境問題を考える上で参考となる判例(たとえば地下室マンション事件)などを中心に検討を加えたいと考えている。また、アメリカの法規制や裁判例に進展があれば、土壌汚染問題や土地利用規制について、更なる検討を加えたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度に研究会報告を頼まれ、また学会及び研究会に参加したいと考え、次年度の旅費に使用するために、購入を見送った洋書がある。 従って、次年度の使用計画としては、次年度の予算とあわせて、旅費に使用するとともに、今年度見送った洋書を中心に本などを購入し、研究を続けていきたいと考える。
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