2017 Fiscal Year Research-status Report
執政制度とコーポラティズムの関係変容:フランス家族政策を事例に
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16K17044
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
千田 航 釧路公立大学, 経済学部, 講師 (80706747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家族政策 / フランス / 福祉国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画において、平成29年度はフランスでの現地調査と資料収集を行い、成果公表に向けて研究を継続することになっていた。しかしながら、平成29年4月より所属先が変更になったため、4月、5月のフランス大統領選挙に合わせた現地調査を実施することができなかった。代替策として、7月末に開催された日仏政治学会でフランス大統領選挙に関する情報を得るとともに、他の出張の際にも関連する情報の意見交換に努めた。また、前年度に完遂することのできなかった理論枠組みの構築については、「政治の大統領制化」との直接的な関係は明確になっていないものの、コーポラティズムの影響力減退を招く制度的変容を説明するまでに至ったといえよう。このほか、当該研究費を用いて学会への参加や研究打ち合わせを多く行うことにより、研究目的を達成するための材料は揃いつつある。 以上のように研究を進めるなかで、2018年3月に2本の論文を公表した。第一に、「フランスの保育サービスと認定保育ママ―日本への示唆―」はフランスの保育サービスについて認定保育ママがなぜ主要な保育方法となったのかを明らかにし、そのうえで日本への適用可能性についても指摘した論文である。この論文は査読付きではないものの、公共選択学会より寄稿依頼を受けて書かれたものである。第二に、「フランスの社会的投資と家族政策・最低所得保障」(三浦まり編『社会への投資』(岩波書店)所収論文、59-81頁)は社会的投資戦略をキーワードとしてフランス福祉国家の発展を論じたものであり、オランド政権やマクロン政権で大統領がフランス福祉国家に果たした役割についても記述がある。本書は著名な政治学と経済学の研究者もともに執筆しており、学際的なネットワークを広げることもできた。 これらの研究成果をさらに発展させ、当該研究費の研究目的を達成するための成果を平成30年度には出していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べた通り、研究計画と研究実績の両面においておおむね順調に進展している。この状態を維持できれば、平成30年度の成果公表も充実したものになると予想できる。 ただし、「政治の大統領制化」との関係をより明確にする必要があることと、当該研究費を次年度に使用するために平成29年度の支出が少なかったことが課題として挙げられる。 前者に関しては関連書籍の収集に努めることで当該研究費の研究目的に沿った成果を出せるよう継続して取り組むことを予定している。 後者に関して、は平成29年度に繰り越した分を成果公表として使用し、平成30年度の研究計画の遂行に対して更なる充実した結果を出すよう努めるとともに、平成30年度の研究費を当初の計画通りに使用することで当該研究費の適正な執行を心掛ける。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には当該研究費の成果として単著を刊行予定である。平成28年度以降継続して取り組んできた単著が平成30年度に刊行できれば、当初の計画以上に成果公表が進んだといえるだろう。 単著の刊行は平成30年度前半を予定しているため、後半ではより当該研究費の研究目的に沿った成果が挙げられるよう研究会での報告や論文公表を行っていく予定である。また、必要に応じて再度フランスを訪問し、資料収集や現地調査に努めていく。
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Causes of Carryover |
平成30年度前半に当該研究費に関連する単著を公刊する予定であり、その成果公表費用に用いる計画である。
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