2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17088
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
岡野 芳隆 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 講師 (20513120)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済理論 / 実験経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主要な活動は2点である。一つ目は、混合戦略均衡実験において集団(複数の個人が互いに話し合って一つの意思決定をする)と個人の学習にどのような違いがあるかを経済学実験を通して明らかにする研究である。伝統的なゲーム理論予測であるミニマックス戦略に加え、実験データをうまく説明できると定評のあるExperience-weighted attraction learning model, 強化学習モデル, 信念学習モデル, 質的応答均衡の中から実験データに最もうまく適合するモデルを選ぶモデル選択の手法を用いてミニマックス戦略のパフォーマンスを検証した。集団の実験前半の行動は信念学習モデルが最も適合し、実験後半はミニマックス戦略、個人は前後半ともにミニマックス戦略が最も適合するという結果を得た。仮説検定でミニマックス戦略のパフォーマンスを検証していたこれまでの先行研究では、集団はミニマックス戦略と整合的で、個人はそれに従っていないという結果が得られており、これと比べると本研究の対照的な結果は非常に新奇性があると考えられる。以上の研究結果は、第20回実験社会科学カンファレンス(同志社大学)と東京大学で行われた研究セミナーで報告した。また、現在論文をまとめている最中である。 二つ目は公共財ゲーム実験を用いた集団と個人の協力行動の違いとその動機に関する研究である。今年度は実験データの収集を行った。13セッションを行い、計204人の被験者からデータを収集した。まだデータは不足しているので来年度に追加実験を行う必要があるが、現在までに分かっている結果をまとめると「集団は個人に比べて協力率が低い」ことと、その原因の一つが「集団は公共財ゲーム実験の利得構造に関する理解が個人よりも優れており、confusionによる協力が少なかったため」ということがわかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画は3点であった。一つ目は混合戦略均衡実験における集団と個人の学習効果の違いを明らかにすること、二つ目は公共財実験における集団と個人の協力行動の動機の違いに関する研究において150人規模の実験を行うこと、三つ目は集団の意思決定の経験がどのようにその後の個人の意思決定に影響を与えるかに関する実験デザインを精緻化し、実験できるレベルにまでアイデアを高めることであった。 一つ目に関してはすでに分析は終わっており、現在論文にまとめている最中である。来年度には国際誌に投稿していく予定である。二つ目は200人以上の被験者からデータを収集しており、予定より進んでいるといえる。三つ目に関してはすでにアイデアは固まっており、来年度に入ると実験実施に必要な資料を作り始める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「混合戦略均衡実験における集団と個人の学習効果の違い」の研究に関しては、論文を仕上げて国際誌に投稿していく予定である。「公共財実験における集団と個人の協力行動の動機の違い」の研究に関しては、追加実験を行い十分なデータ数を確保したうえで分析を進め、論文作成に取り掛かる予定である。「集団の意思決定の経験がどのようにその後の個人の意思決定に影響を与えるかに関する研究」については、実験資料を作成し来年度後半から実験データの収集に入っていきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)