2017 Fiscal Year Research-status Report
多対1マッチング問題におけるコア解の性質の多面的解明と市場設計への応用
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16K17092
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| Research Institution | Hitotsubashi University |
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Principal Investigator |
赤星 立 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (30609219)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | マッチング問題 / コア / ペア安定性 / vNM解 / 学校選択制 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
マッチング問題の研究の中心はコア配分およびコア解の性質の解明である。理論研究のみならず、現実のマッチング市場設計においても、特定のコア配分を達成するようなメカニズムの設計が望ましいと考えられてきた。これは、これまでの研究により明らかにされたコアの持つ望ましい性質だけが理由ではなく、いくつかの経験的な理由（例えば、英国の研修医マッチングでは地域毎に異なるメカニズムが用いられていたが、非コア・メカニズムは機能不全に陥り、次第に用いられなくなってきた）にも支持されている。
本研究は、コアより広い解概念（常にコアを部分集合として含むような資源配分が解として指定される）についての研究を行うものである。いくつかの有名なコアの性質を選び出し、それらを共有する解概念が存在するのかを考える。これにより、コアの持つ有名な性質の中で、どれがコア固有の性質であるのかが明らかになる。また「コアが望ましい性質を持つこと」は必ずしも「コア以外の解概念が望ましくないこと」を意味しない。本研究により新たな望ましい解概念を提示できる可能性もある。
平成28年度は、（１）「ペア安定性」という性質の解概念を提示し、それを満たす解がコアの持つ重要な性質を共有していることを示し、（２）コアとペア安定性は一般には一致しないが特定の環境下では一致し得ることを示し、更には具体的にどのような環境で一致するのかを調査した。平成29年度は（１）の研究を進展させ、結果を論文としてまとめ、国際学会で２度報告を行い、得られたコメントをもとに改訂作業を繰り返しているが、まだ投稿に至っていない。また（２）の論文を国際的な学術雑誌へ投稿し、その後改訂要求を受けた。さらに（３）マッチング問題に限らず様々な経済問題を含むような一般的な経済環境で、必ずしも両立しない２つの解概念を組み合わせて作られる新たな解概念についての研究を開始した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、概ね順調に進展していると言える。上述の通り、２つの理論研究は既に論文になっている。１本は投稿済みで、もう１本も間もなく投稿プロセスに入ることができるものと思われる。
応募時の研究計画では具体的に３つの研究課題が挙げられている（それぞれ研究１～３と呼ぶ）。研究１および２は主たる研究課題であり、研究３はこれらが上手く行かなかったときの補助研究課題として位置付けられている。研究１については既に完了した（昨年度報告書に記載済み）。研究２は、本研究で提示した「ペア安定性」という解概念がコアと一致する環境を特定化することを目的とする。マッチング市場のプレイヤーたちの選好に関する条件で、ペア安定性とコアが一致する条件を求め論文にまとめた。昨年度得ていた条件を精査し、（現実的に起こり得る仮定を加えることで）より簡素な条件でこれを表現することができることが分かった。この結果を反映させ論文を改訂した。また、ペア安定性とコアが一致する条件で、上記のプレイヤーたちの選好以外に関するものも見つかったため、これも改訂に反映されている。最初の投稿プロセスにおいて、審査員からの返答に予想より時間がかかった。また再投稿にも、当初の予定よりも時間を要している（近日中に再投稿する予定である）。研究３は、研究１と２が順調に進んでいるため具体的には手を付けていない。今後も研究２の理論パートが順調に進展した場合は手を付けないつもりである。
このように、２つの主たる研究のうち１つが完了し、もう１つは昨年度より進展した。投稿プロセスにおいて予定より時間がかかっているものの、大きな遅れが生じている訳ではない。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると結論付けた。
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| Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は順調に進展しているので、今後も当初の計画通りに遂行していきたいと考えている。平成３０年度は本研究の最終年度となるので、すべての計画を完成させることが目標となる。
何よりもまず（ア）投稿中の論文が掲載受理されることを優先したい。上述の通り、改訂要求を受けた１本の論文を近々再投稿する予定である。もし、さらなる改訂要求を受けた場合には最優先して対応することにしたい。続いて（イ）改訂中のもう１本の論文も可能な限り早く投稿したい。昨年度参加した国際学会で、関連研究を行っている研究者たちと話をすることができた。そこで得られたコメントを反映させ、早期に投稿プロセスに入りたい。順調に準備ができているので、（ア）が済み次第取りかかる。（ア）が済めば次は同じく（イ）が最優先として扱われる。またこれらと並行して（ウ）新たに開始した研究（概要欄の（３）の研究のこと。以下では新研究と呼ぶ）も進める。新研究は、概要欄に述べたように、本研究計画で扱うマッチング問題を含む広い経済環境下での研究を目的としており、実際の完成までには、本研究期間終了後も多くの時間が必要となる。しかし、一般的な環境下で得られたいくつかの結果については、本研究の環境下に限った場合に再解釈することで、本研究へ活用できそうである。そこまでは本研究の一環として進めて行きたい。得られた結果をまとめ、学会やセミナー等で発表したい。また積極的に他の研究者と議論する機会を設ける。そこで頂いたコメントを研究にフィードバックさせたい。
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| Causes of Carryover |
本研究申請時点での概算と実際の購入時の費用に誤差が生じたことにより、4,114円を次年度に繰り越すことにした。年度途中で所属大学が変更になったことで、交通費計算の起点が変更になったことや、物品の調達方法が変わったことはその一因である。また、一部の消耗品については、新たな所属先から支給されたことにより購入する必要がなくなったことも理由として挙げられる。平成30年度も同様に計画との誤差が生じるものと思われるので、この残額はその調整などに充てられる。
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