2016 Fiscal Year Research-status Report
衣料産業におけるグローバルな都市間分業―持続的都市成長の原動力――
Project/Area Number |
16K17242
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
三田 知実 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (20707004)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 衣料産業のグローバルな再編 / 衣料デザインと製造をめぐるグローバルな都市間分業 / 高級衣料デザイン部門と製造部門の世界的経済格差 / 衣料産業とファッション街区への不動産投資 / 衣料文化生産とグローバル経済の強い結びつき |
Outline of Annual Research Achievements |
■調査進捗状況:2016年度においては児島の事例調査、国際素材品評会とNY衣料デザイン企業を対象者とした聞き取り調査を行った。 ■調査結果(1)高級ブランド大資本が高級衣料製造企業に製造委託を行う場合、決して製造工程に見合うものではない価格であることもある(2)特に児島や北米の事例調査から明らかにされたことは、高級ブランド大資本を重点化ししていた製造企業がファストファッションの台頭(アジア諸国への大工場への製造移転)のほか、欧州高級ブランド大資本からのマージンが適正であるものとは限らず、世界的流行が申し合わされるシーズンにより、受託案件が著しく変動する(3)2011年に良質なコットン栽培(高級衣料製造に必要不可欠)を可能にしてきた、インド・パキスタンの大洪水が発生し、良質な綿花栽培の世界的危機を迎え、グローバル製薬企業が安定的コットン栽培のための研究部門を立ち上げた(4)こうした経緯のもと、先物取引や衣料品デザイン・小売企業の戦略的買収に特化していた投資家は東京などのグローバル都市で解禁された不動産投資信託(REIT)へとシフトした。そのため綿花やファッション企業への投資から、都心のファッショナブル街区の物件をREITの対象とした投資へとシフトした。空間のドラスティックな再編を促した。これは予想を上回る、当初の見込みを超えた調査結果である。 ■知見と意義 2016年調査から、高級衣料デザインと高級衣料製造をめぐる経済格差を生み出し、2011年以降の綿花価格の上げどまりが投資家をREITに集中させグローバル都市のファッション街区の空間再編を促した。この知見を基にした成果として、2017.9@Hong Kong Univでの報告準備とCity and Communityへの投稿論文を作成中。衣料文化生産とグローバル経済を結びつけた現代都市社会学として大きな意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
■全体の進捗状況について・・・2016年4月14日以降の熊本地震の発生により、本務校に被害が発生し、調査開始および研究成果公表準備作業開始に、遅れが発生した。しかし現在のところ、研究成果公表準備に向けた作業を進めており、2017年度に複数本の論文を投稿・公表・プレゼンテーションを行うことができる見込みである。 ■調査の進捗状況について・・・熊本震災発生による所属機関の安全性確認でのあいだ、本格的調査を開始できなかったが、2016年夏以降、海外渡航調査を含めて、調査を本格的に行うことができた。北米や東京での衣料産業従事者(ニューヨーク、EU諸都市や東京などを拠点)への聞き取りのほか、投資家への聞き取りも可能にし、グローバル経済のなかの投資の位置づけや動向をも把握することができた。それにより、上述のとおり、豊かな調査結果を得ることができた。 ■研究成果の公表について・・・当初は事業1年目から成果公表を英語論文/国際シンポジウム報告/国内学術雑誌への投稿を計画したが、英語論文の投稿がまだ、達成できていない。これは熊本震災発生に伴う研究開始の遅れよりも、調査結果が、予想よりも厚みのあるものになったためであるといえる。2017年度は、可能な限り早い時期に、未達成となっている英語投稿論文アクセプトに向けた投稿を行う。 以上の進捗状況から、研究代表者は「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
■研究成果の公表について 研究会やシンポジウムなどにおいて、研究指導を研究者より多角的な視点から受けることができた。研究最先端のグローバルな動向とドメスティックな動向が異なる要素も多いため、慎重に議論を進めてゆく。 ■調査対象地での安全確保について 世界的に治安悪化が進んでおり、調査対象地が先進国都市の都心であるものの、むしろ都心のほうがテロの危険性が高まっている。現地調査や研究報告における安全確保になお一層の安全確保を図る ■研究成果の公表 本年度は、予定通りの事業達成を図るために、研究成果を、研究倫理、法令等を順守し公表してゆく。
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Causes of Carryover |
(1)全体における使用状況が異なった理由は、前年度(2016年度)に勤務先が立教大学から、熊本県立大学に異動したため、執行開始時期が予定より遅れが生じたため。また2016年熊本地震による被災により、研究室の什器が倒壊し、研究業務に本格的に取り掛かることができた時期が当初より大幅に遅れたため。 (2)物品費については、海外学術雑誌投稿準備のため、海外学術雑誌/資料を、業者に発注したが、シカゴから必要な文献資料の取り寄せに大きな時間的コストが生じたため。また旅費についても、熊本震災に伴う研究事業の開始に時間が生じたため。また当初の予定よりも低いコストで調査が可能になったため。この理由は、前職場の立教大学から熊本県立大学に異動したことによる。国際線の場合羽田経由ではなく、ソウル仁川経由の航空経路を使いニューヨークでの調査を行ったため。また倉敷市児島へも岡山乗換で半分の距離となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)物品費において、海外学術資料の取り寄せと、論文執筆が本格化。そのため、2017年度予算においては当初よりも多めの経費が必要になる。 (2)また旅費については、9月に香港大学で実施される国際研究会議での報告や、ハウスオブデニム(衣料産業の素材展示会)ならびに、製薬会社(価格が高騰した良質な綿花の栽培実験に進出)への聞き取りなど、先進国諸都市における調査研究を進めるため、2017年度においては、当初よりも出張旅費が増える見通しである。
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Remarks |
2017年5月10日現在。2017年度中に、国際共同研究ならびに国際学会における直接的研究成果の公表を行う。
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Research Products
(4 results)