2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17247
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡田 彩 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (30707360)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | NPO・NGO / 情報発信 / 戦略的コミュニケーション / NPOマーケティング / ソーシャルマーケティング / ソーシャルメディア / 寄付 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「情報の発信者」としてNPO(非営利組織)を捉え、その社会的役割の実証的な探究を目的としている。今日、社会問題の解決を担う主体として注目を集めているNPOは、①市民からの支持獲得、②社会問題の解決に向けた過程への参加機会の提供、③情報公開への対応およびアカウンタビリティの達成という3点から、戦略的に情報を発信することが求められている。本研究は、NPOがその際に利用する「媒体」と発信する「内容」に注目しながら、その戦略性を把握、分析するものである。本年度は、以下5つの活動を行った。 ①関連する学問分野における最新の文献・論文のレビューを行った。また、日本全国からNPOの実務家が集まる「ファンドレイジング日本2017」に参加し、情報収集を行った。 ②東日本大震災からの復興に従事するNPOが利用した情報発信の「媒体」を調査し、独自のデータベースを構築した。中でも、その特性からソーシャル・メディアの利用に着目し、FacebookとTwitterを通じた情報の発信頻度や内容の分析を行い、結果として多くの寄付を集めている団体による情報発信の特徴を明らかにした。 ③「非営利セクターの資金調達に関する調査プロジェクト」の一環として、アンケート調査を実施し、日本で活動する1,433団体が情報発信のために利用している「媒体」に関するデータを得た。 ④「NPOのアカウンタビリティに関する国際比較調査」の一環として、NPO実務家にインタビューを行い、誰に対し、どのような説明責任を果たす必要があると考えているのかを調査した。その中で、情報発信の位置づけに着目した分析を行った。 ⑤臓器移植意思表示を推進するNPOのアクションリサーチに参加し、人々の行動を変容させる情報発信の在り方を探求した。先行研究から具体的な介入のメッセージや媒体をデザインし、その結果として見られた意思表示行動の変容を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本で活動するNPOが情報発信に利用する「媒体」の傾向を明らかにすることを目的とし、データベースの構築を計画していた。結果、上記活動②において、震災復興に従事するNPOを対象とした独自のデータベースを構築できたほか、活動③では、複数の法人格・活動分野を網羅した1,000以上の団体による「媒体」利用に関するデータを得、その傾向を分析することができた。さらに活動④では、「媒体」選択に際する戦略性についても、分析を深めることができた。
次年度以降着手予定としていた、情報発信の「内容」分析にも、本年度から踏み込むことができた。活動②では、震災復興に従事するNPOが発信した情報の内容を分析したほか、活動⑤では、NPOが発信する情報発信をデザインする過程に関わり、情報の「受け手」の反応を分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、関連学問分野における最新の文献・論文レビューを行いつつ、NPOによる情報発信の「内容」に着目した分析へと、研究の焦点をシフトしていく。上記活動②については、震災復興に関わるNPOがソーシャル・メディアを通じて発信した情報の「長さ」、発信の「タイミング」、そして「内容」とを掛け合わせた分析を実施予定である。活動③から得られた大規模データでは、全体的な情報発信の傾向を把握するほか、その戦略性の分析を深めていく。さらにサンプルの中から、特徴的なNPOを数団体ピックアップし、発信している情報の内容分析を行う予定である。
次年度より着手する試みとして、情報の「受け手」の反応に焦点を当てた分析を予定している。あるNPOが、広報の一環として発信した内容の異なる複数の広告を見せ、発信された情報のどういった点に着目して「最も心に響く」広告を選択するのかを、自由記述で回答する実験を行い、着目されるポイントやメッセージのフレームを抽出していく。本年度、予備調査として350名の大学生からデータを収集し、入力を終えているほか、分析に妥当なツールとして選定したソフトウェアKH Coderのワークショップに参加し、トレーニングを受けるなど、分析の準備を整えた。次年度は、この分析を行うと同時に、さらなるデータ収集を行っていく。
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Causes of Carryover |
物品を予定より安価で購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最新の書籍・文献を購入する。
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Research Products
(12 results)