2019 Fiscal Year Research-status Report
生活困窮者に対する就労支援体制構築への視座-仏国の「中間的就労」の現状と可能性
Project/Area Number |
16K17257
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小澤 裕香 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (00582032)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランス / 貧困 / 中間的就労 / 生活困窮者 / 就労支援 / 雇用創出 |
Outline of Annual Research Achievements |
育児休業のため研究中断中(平成29-31年度)。 本研究は、中間的就労を担う多様なアクターの実態、および被就労支援者の個別具体的な支援事例について現地調査により明らかにし、中間的就労が効果的に機能する諸条件を実践面もふまえ明らかにすることを目的とする。 平成28年度は、現地調査においては、パリを中心に実施体制にかかわる諸主体にヒアリング調査を行った。その結果とりわけフランスで中間的就労政策は、県が実施責任単位となり多様なアクターとの連携のもと進められていることが明らかになった。アクターには、県知事、ハローワーク(雇用局)、予算を管轄する国の機関、自治体、労働組合、そして経営者組合の各代表者、さらには生活困窮者の雇主である中間的就労事業者の代表者がいる。 そしてこれらのアクターが参加する「県中間的就労評議会」という組織がある。その役割は、当該地域の生活困窮者のニーズや実際に提供可能な職業訓練・社会生活支援策の把握や開拓などを行いながら、中間的就労が地域経済の活性化につながるような戦略をたてることである。またこの組織は中間的就労事業者の認定にかかわる作業も担っている。 また文献研究として、中間的就労の政策枠組みや被支援者の全体的な状況を把握した。雇用局で中間的就労支援策の利用を認められた生活困窮者は、中間的就労事業者と雇用契約を結ぶことによって、就労機会と同時に安定的雇用を目指した職業訓練(職業的参加)や、医療や住宅へのアクセス(社会的参加)など個人のニーズに応じた多様な社会生活支援を受けることができる。このような政策枠組みのもとで支援を受けている生活困窮者はおよそ2013年時点で13万人であり(その45%が生活保護受給者)、そのうち4割が支援終了後に雇用を得ることができている。支援を受けない場合の雇用取得率が2割であることからすると一定の成果をあげているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で成果を得るためには、何よりも現地調査の実現にかかっている。そのためにフランスの中間的就労政策に関するアクターとの人脈づくりが非常に重要で あるが、幸いにしてパリという地域に限定したものであるが、政策体系に含まれる主要なアクターを網羅して聞き取り調査を行うことができた。そのため、初年 度の目標は十分に達成され進捗状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
文献研究においては、中間的就労に関する議論(一般労働市場との関係を中心に)がどのようになっているのかを把握する。 ヒアリング調査においては、明らかになった政策体系が具体的にどのように機能しているのか(とくに連携体制のあり方など)、また抱えている課題等につい て、当該アクターより聞き取りを行う。 これらを踏まえて、中間的就労の実施体制のあり方や評価指標となるような項目の抽出を行う。と同時に、日本における生活困窮者自立支援政策に対する示唆を 検討していく。
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Remarks |
小澤裕香(2019)「フランスにおけるワークフェア」佐々木隆治・志賀信夫編著『ベーシックインカムを問い直す』法律文化社
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