2020 Fiscal Year Research-status Report
生活困窮者に対する就労支援体制構築への視座-仏国の「中間的就労」の現状と可能性
Project/Area Number |
16K17257
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小澤 裕香 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (00582032)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランス / 就労困難者 / 社会的養護 / 措置延長 / ハローワーク / 自立支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中間的就労を担う多様なアクターの実態、および被就労支援者の個別具体的な支援事例について現地調査により明らかにし、中間的就労が効果的に機能する諸条件を実践面もふまえ明らかにすることを目的とする。当該年度は、コロナ過の影響を受けて現地調査を行うことができなかったため、文献研究を中心に進めた。
近年フランスにおいては、就労困難者のなかでもとくに社会的養護(児童養護施設、里親等)のもとで生活し、成人年齢と同時に社会に巣立つ若者がホームレスになったり、就労困難層の少なくない部分を占めている。そこで、社会的養護のもとから巣立つ若者に対する就労を含めた自立支援がどようになっているのかという制度的枠組み、並びにマクロン政権になってとくに進展がみられた社会的養護退所者の自立支援の動向やその背景について検討することにした。 フランスにおいて社会的養護のもとを18歳という成人年齢で退所する人のうち、およそ3分の1が措置延長制度によって支援が継続されており、青年期が全体として延長されているなかで、より不利な条件で自立していく社会的養護の子どもの自立支援を考えるうえで、措置延長の役割への期待が高まっていることが明らかになった。 措置延長期間に、必要に応じた金銭給付ならびに担当エデュケーターによる定期的な生活相談や必要に応じた心理士のサポートも受けながら、就学の継続に関する支援や就職活動の支援が受けられる。 措置延長制度を利用する若者の追跡調査によれば、措置延長期間において、金銭管理や日常生活における生活能力の取得とともに、ハローワークでの求職活動など雇用へのアクセスにおける具体的ノウハウの習得が顕著にみられることが明らかになった。またコロナ過においても緊急事態宣言下においては自動で契約が更新されるなど、不安定な状態で自立を迫ることのないように予算措置も含めた法律改正で対処している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献研究は一定程度進めることができたが、海外渡航による現地調査によるデータ収集を必要とする研究のため、コロナ過において調査ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
可能であれば現地調査において就労困難者への支援者に対する聞き取り調査を実施する。 コロナ過において引き続き海外渡航の可否が課題となっているが、オンラインでの聞き取り調査が可能かどうかなども含めて工夫をしていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ過において海外渡航ができず現地調査未実施となっため翌年度に持ち越した。可能性を最大限模索し、次年度に現地調査を実施する予定にしている。
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