2016 Fiscal Year Research-status Report
終末期ケアにおける多職種連携-ソーシャルワーカーのコンピテンシーに関する研究-
Project/Area Number |
16K17282
|
Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
上山崎 悦代 日本福祉大学, 福祉経営学部, 助教 (80711655)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 多職種連携 / 終末期ケア / ソーシャルワーカー / コンピテンシー / 研修プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に実施した研究は、終末期ケアにおけるソーシャルワーカー(以下、SWer)が担う役割とコンピテンシー分析のための調査である。具体的には、特別養護老人ホーム2か所(従来型とユニットケア型)と医療機関1か所(地域包括ケア病棟)の多職種に対するグループインタビュー調査を実施した。当初、SWerに対する調査のみを計画していたが、グループインタビュー調査とした。理由として、本研究が、多職種連携(IPW)におけるSWerの立場や能力に焦点化させたものであることから、多職種との意見交換の場でのSWerの発言等を分析することが妥当と考えたためである。同時に、多職種で関わった終末期ケアの事例調査も行った。 現時点で明らかになったことは、主に次の2点である。1つは、SWerは地域を基盤とした組織内外への積極的な働きかけを行っていること、もう1つは、組織内マネジメントや家族を巻き込んでのケアに中心的な役割を果たしていることである。そのため、SWerにはこれらに対応する能力が必要であることが確認できた。なお、事例調査では、際立ってSWerが中心的にかかわる場面は見受けられなかった。理由として、よく見られる事例を選択し、調査した影響とも考えられる。ただし、社会的に困難な状況を有する人への関わりは、一般的な事例に比して格段に関りが多くなっていることが推察できた。 加えて、平成27年度に実施した「振り返りのカンファレンス」の評価に関する分析と、それに参加したSWerに対する個別インタビュー調査を実施した。ここからは、多職種との交流の場であるカンファレンスを通して、SWerとしての自らの役割や他の職種から期待される内容について多くの気づきを獲得していたことがわかった。そのため、カンファレンスのような小グループで討議する場が、SWerのコンピテンシーを明らかにするうえで有用な場であることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画していた調査は3つ(インタビュー、事例、質問紙)で、このうち2つは実施済である。現在、調査の分析に着手していること、一部の研究成果については学会にて発表予定であることなどから、おおむね順調に進展していると判断した。 なお、調査方法として、当初はSWerのみに対する調査を予定していたが、先行研究やIPWの実態把握、その他の助言等を踏まえ、多職種を対象とする調査も含めることで、目的を達成することとした。また、平成28年度中に実施しなかった質問紙調査については、調査方法の妥当性等を検討中である。 その他、研究対象の施設として、医療機関と介護保険施設、ならびに居宅支援施設を予定していたが、居宅支援施設ついては現在調整中のため、速やかに実施する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、終末期ケアにおけるIPWに際し、SWerが果たすべき役割やコンピテンシーを明らかにすることと、必要とされる研修プログラムの開発にある。 IPWがキー概念となっているため、SWerの役割やコンピテンシーの検証は、IPWの場の中で行うことが適当と判断した。そのため、調査対象は、SWerのみとするだけでなく、多職種に拡大させて展開する予定である。 また、平成29年度の主たる研究課題である研修プログラムの開発については、すでに取り組んでいる多職種向けの研修プログラムの開発・試行のプロセスを活用できると考えている。このプログラムは、SWerの参画も想定していることから、研究課題と強く関連する。試行後には、プログラムを評価することで、その有用性を検証する。検証に際しては、多職種を対象とするだけでなく、SWerに対する個別の調査等により、より詳細な分析を行いながら、プログラムの修正を図る。 これまで同様、終末期ケアの領域に関わる研究者や実践家が集まる研究会の場を活用することで、更に研究を推進していく。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた居宅支援に関わる対象者への調査が未実施であること、ならびに、質問紙による量的調査の方法を再検討したため、謝金や設備備品費の当初予算を使用しなかった。これらを次年度に実施するため、使用額が生じている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
居宅支援に関わる対象者への調査のために、謝金、国内旅費、ならびデータ入力のための謝金を使用する。量的調査については、実施後の分析のためにパソコンと分析用ソフトの購入を予定する。 研修プログラム開発に関しては、研究協力者の謝金を中心に、プログラム保管用書架や消耗品を購入する。
|
Research Products
(3 results)