2016 Fiscal Year Research-status Report
身体への気づきが対人場面での行動ならびに意思決定に及ぼす影響
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16K17297
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
増井 啓太 追手門学院大学, 心理学部, 特任助教 (00774332)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 対人行動 / パーソナリティ / 内受容感覚 / Embodied cognition / Dark Triad |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は身体への気づきの程度がどのような個人特性と関連するかについて検討した。とりわけ,本年度はDark Triad(以下DTとよぶ)と呼ばれる個人特性との関連を調べた。DTとはマキャベリアニズム,サイコパシー,自己愛性傾向の総称のことで,共感性や罪悪感の著しい欠如,自己中心性,他者への高い攻撃性などの特徴を示す(Paulhus & Williams, 2002)。このようなDTの特徴によって,高DT傾向者は適切な対人関係の構築,維持に困難を示すことが先行研究によって明らかとなっている(e.g., Masui, Nomura, Ura, 2012; Masui & Ura, 2016))。 まず,質問紙調査にて身体への気づきの程度を回答者の自己報告によって測定するMultidimensional Assessment of Interoceptive AwarenessとDTを測定するDark Triad Dirty Dozenとの関連を調べた。その結果,身体への気づきの程度の得点とサイコパシー傾向を測定する項目との間に負の関連が認められた。したがって,サイコパシー傾向の高い人ほど自身の身体内部の変化に対して鈍感であることが示唆された。 次に,身体への気づきの中から「外的環境の寒さへの気づき」に着目し,寒さへの気づきの違いがDT,およびDT傾向の高い人の行動に及ぼす影響を検討した。先行研究では,身体的な(環境的な)暖かさと心理的な温かさとが密接に関連することを報告している(Williams & Bargh(2008)。本調査においても外的気温の暖かさが高DT傾向者の援助行動を促進させることが明らかとなった。このことは,たとえ身体への気づきの程度が低い高DT傾向者であっても,その必要性の低い環境では利他的に振る舞える可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに身体への気づきの程度と非互恵的な対人行動に関連する個人特性との関連について明らかになっている。また,身体への気づきに関わる環境要因が対人行動に及ぼす影響についても検討された。したがって,おおむね当初の計画どおりに研究が進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として,寒さへの気づきの違いが対人場面でのDT傾向の高い人の行動や意思決定に及ぼす影響について,より詳細なプロセスを明らかにする必要がある。そのためには実験的手法を用いて,外的環境の寒さの操作,援助行動の測定方法を厳密に行う必要がある。具体的には,空調機を用いて実験室の温度を一定に保つ,援助行動を行動指標として測定できる課題を用いるなどである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,まず,研究初年度ということもあり研究実施までに準備を要し研究実施回数が少なかったため人件費や謝金が少なかったこと,研究成果が学会発表の水準まで達しなかったため,学会などへの出張を行わなかったため,旅費が発生しなかったことがあげられる。また,研究図書の購入が予定より若干少なかったこともあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては,研究実施回数を増やし人件費や謝金に使用すること,学会への参加のための旅費に使用すること,研究図書の購入を増やすこと,論文投稿の際の英文校閲として使用すること,などを計画している。
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