2017 Fiscal Year Research-status Report
明治日本における小学校教員の教育研究の制度化に関する研究
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16K17405
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Research Institution | Hiroshima Bunkyo Women's University |
Principal Investigator |
白石 崇人 広島文教女子大学, 人間科学部, 准教授 (00512568)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育学 / 日本教育史 / 日本教員史 / 教師論 / 教育研究 / 大瀬甚太郎 / 教育会 / 授業批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、明治日本における小学校教員の教育研究の制度化過程を明らかにすることである。本研究の研究課題は、明治期における教員養成政策・制度や教師論、教職生活の実態などを踏まえながら、①教師の教育研究の意義に関する当時のとらえ方の分析、②師範学校・教育会を舞台にした教育研究の組織化・制度化過程の分析、③教育研究の制度化後の展開に関する実態・課題の分析という三つの研究課題を設定している。 平成29年度は、明治30年代における教育研究の組織化過程を解明することをテーマとして、明治30年代の地方教育雑誌や刊行物における小学校教師論や師範学校・教育会の教育研究活動の分析を行った。具体的には、『東京府教育会雑誌』や『鳥取県教育雑誌』、『因伯教育』、『後月郡教育会報告書』、そして『鳥取県師範学校一覧』や鳥取県公文書館所蔵の学校文書などをもちいて、小学校教師のあり方に関する史料や師範学校・教育会で報告された教育研究の事例や組織に関する史料を研究した。また、教育雑誌『教育学術界』の分析も昨年度と継続して行った。 研究成果としては、4つの研究論文をまとめて公開した。第1に、『教育学術界』や『因伯教育』などの研究は、教育史学会紀要『日本の教育史学』掲載の学術論文としてまとめた。第2に、『東京府教育会雑誌』による研究は、不二出版発行の『東京府教育会雑誌』の解説論文としてまとめた。第3に、『鳥取県教育雑誌』等の鳥取県内の史料による研究は、鳥取県『鳥取県史』資料編・近代7(2018年3月)の掲載史料を選定することと同時に、その成果を教育関係史料の解説論文としてまとめた。第4に、東京府や鳥取県の史料を研究し、中国四国教育学会紀要掲載の学術論文としてまとめた。また、『後月郡教育会報告書』の分析は、論文としてまとまらなかったので、次年度に継続して研究を進めることとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究課題はおおむね達成できたと考えるため。地方教育雑誌や刊行物を分析することを通して、明治30年代における小学校教師論や師範学校・教育会の教育研究について研究し、徐々に教育研究の制度化過程の実態が明らかになってきている。 まず、『日本の教育史学』掲載の論文では、大瀬甚太郎の教育学説や研究会活動を通して、教育学アカデミズムにおける小学校教員を含めた教育研究の制度化過程を明らかにした。大瀬は、モイマンの実験教育学から発想して、教師が教育研究を行うことの意義を大いに認め、小学校教員を研究者として位置づけて教育学術研究会を結成したことがわかった。第2に、『東京府教育会雑誌』解説では、東京府教育会が普通教育擁護・推進のために教育研究を演説討論に限らない形で進めるために結成されたことを明らかにし、明治20年代後半の教育研究組織の多様化の中で雑誌編集方針を転換していた可能性について言及した。第3に、『鳥取県史』掲載の解説では、明治10年代以降の教員講習や教育会組織の整備に始まり、明治30年代以降の教育研究論の勃興や、明治40年代以降の学校における教育研究体制の整備状況について明らかにした。第4に、中国四国教育学会紀要掲載の論文では、東京府と鳥取県における明治20年代以降の授業批評会の状況について明らかにし、官民両方からのアプローチによって授業を批評して教育を研究する組織が成立・運営していたことを明らかにした。 本年度では、予定した一部の史料の分析ができなかったが、かなりの数の史料の分析を進めることができた。研究成果は4本の研究論文としてまとまっており、十分な結果をあげることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は明治30年代における教育研究の制度化過程について研究したため、平成30年度は明治40年代における制度化された教育研究の展開について研究する。明治40年代の教育学書(小西重直や吉田熊次、沢柳政太郎など)や中央教育雑誌の『教育学術界』、『小学校』、『日本之小学教師』などを分析して、教育研究についての論説や記事における小学校教員の教育研究の位置づけについて研究する。特に、明治30年代末の鳥取県教育会で教育研究の成果発表の場として位置づけられ始めていた教育品展覧会について、その教育研究上の意義を研究したい。
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Research Products
(5 results)