2022 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of the Concept of "Ability" in New Graduate Hiring: An Analysis of Interactions and Social Consciousness
Project/Area Number |
16K17414
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
堤 孝晃 東京成徳大学, 子ども学部, 准教授 (10734642)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 採用 / 面接 / 能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、本研究は、新卒採用場面における「能力」概念を、具体的な採用過程のミクロな場面と、社会意識の形成の2つの側面から総合的に検討することを目的としていた。しかし、諸条件の制約から、前者のミクロな場面の検討にのみ焦点化することになった。 言説上では曖昧にしか表現されない「能力」は、具体的にいかなる振る舞いを指し示す概念であり、それは人々の営みの中でいかに運用されているのかを明らかにすることを目的に調査を行った。具体的には、模擬面接場面を設定し録音・録画を行うこと、またこれに加えインタビュー調査を行うことによってデータを集した。調査対象者は計で、面接官11名、学生17名であり、さらに10名以上にインタビューのみを行っている。 まず明らかになったのは、実際の面接場面においては、「能力」概念がそれほど頻繁に用いられているわけではないことである。そこで本研究は、採用過程(エントリーシートおよび面接による選考)で行われているコミュニケーションのあり方とその特徴を明らかにすることを、目的として設定し直した。 まだ分析を進めている段階で研究が完了していないが、得られた知見としてもっとも重要なことは、学生と面接官は、それぞれがお互いあり方についての一定の予期をもっているということである。その予期を前提に、それぞれ置かれた一定の制約に適した諸ストラテジーを用いることで、自らの行為を正当化したり、結果を意味づけたりしている。 採用選考のあり方を検討する上で課題となるのは、こうしたコミュニケーションの前提となるお互いに関する予期が食い違っていること、そして自身の置かれた環境からの制約にも無自覚であることだ。採用選考という営みは、相互の無知を前提に構成されるものであり、これにどの程度自覚的であるかによって違いが生じる。このあり方の一端を、具体的に記述することができた。
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