2016 Fiscal Year Research-status Report
クレッチュマーおよびケステンベルクの音楽教育改革における「市民」の音楽教育の展開
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16K17458
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Research Institution | Mimasaka University |
Principal Investigator |
工藤 千晶 美作大学, 生活科学部, 講師 (30715248)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドイツ / クレッチュマーの音楽教育改革 / 市民 / 教養 / 学校音楽教育 / 学校外での音楽育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、クレッチュマーおよびケステンベルクの音楽教育改革を音楽的な「市民」の育成という視点から再考し、その特質を明らかにすることである。本年度は、(1)19世紀から20世紀初頭のドイツにおける音楽的な「市民」像を明確にすること、(2)クレッチュマーの音楽教育改革において(1)のような「市民」をどのように育成しようとしたのかを明らかにすることを課題とした。 まず、19世紀から20世紀初頭のドイツの音楽文化は、「教養」ある「市民」によって支えられていた。すなわち、音楽的な「市民」とは音楽的「教養」ある「市民」であった。19世紀ドイツの「教養」理念は、特に歴史学、社会学、音楽社会学の分野で研究が進められ、その特徴として、自己研鑽を積み、調和的な人格を形成すること、つまり人格陶冶に関わるものであったことが指摘されている。本研究では、このような「教養」理念を音楽教育の分野において考察の視点として取り入れることとした。 次に、先行研究をふまえた上でクレッチュマーの音楽教育改革の特質を捉える新たな視座を示した。それは①「学校音楽教育」と「学校外での音楽育成」の双方を考察の射程に入れ、②音楽的「教養」理念を軸として全体像を捉えるというものである。これに関しては論文として発表している。 さらに、ドイツにてクレッチュマーとケステンベルクの音楽教育改革に関する史料の収集を進め、現地図書館内でのみ閲覧可能な当時の教科書や指導書についても調査することができた。それらの史料を扱い、本年度はクレッチュマーの音楽教育改革を考察した。その結果、クレッチュマーは①音楽的「教養」の基礎を養う「学校音楽教育」、②音楽的「教養」ある「市民」として自己研鑽を促す「学校外での音楽育成」という2つの軸から、音楽的な「市民」の育成を図っていたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀から20世紀初頭のドイツの「市民」として必要とされていた「教養」について整理し、本研究における考察の視点を明確にした。また、クレッチュマーとケステンベルクの音楽教育改革に関する史料についても順調に収集できている。クレッチュマーの音楽教育改革に関しては、先行研究をふまえた上で、その特質を捉える視座を提示した。さらに、その視点から実際に分析を行い、音楽的な「市民」へと至る全体像を考察した。これに関しては、引き続き考察し、論文として発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、クレッチュマーの音楽教育改革における音楽的な「市民」育成の全体像についての論文をまとめる。その後、ケステンベルクの音楽教育改革についても、クレッチュマーの音楽教育改革と同様に、「学校音楽教育」および「学校外での音楽育成」という視点から検討し、音楽的な「市民」育成の全体像を明らかにする。その後、2つの音楽教育改革を比較検討する。
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Causes of Carryover |
ドイツ語添削の謝金が必要なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料収集、および学会発表や論文投稿の費用として使用する。
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Research Products
(2 results)