2016 Fiscal Year Research-status Report
プロトン伝導性酸化物における赤外光誘起水素拡散促進効果のミュオンによる直接観測
Project/Area Number |
16K17544
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
伊藤 孝 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究員 (10455280)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 量子ビーム / プロトン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プロトン伝導性酸化物に対して提唱されている赤外光誘起水素拡散促進効果を微視的な観点から検証するために、水素の擬似同位体であるミュオンを用いた実験を行う。酸化物試料にJ-PARCの大強度パルスミュオンビームを打ち込み、同期照射した赤外光に起因するミュオン拡散係数の変化をミュエスアール法により評価する。この「水素同位体」に対する実験を通して、水素そのものの運動に関する知見を得ることを最終的な目標とする。 平成28年度は、本実験のために新たに必要となる装置の開発とその性能評価を主に行った。ミュオン拡散に対し効果が期待される光の波長は、同位体効果により赤外領域から近赤外領域にシフトする。そこで、キセノンフラッシュランプと近赤外バンドパスフィルタを組み合わせたものを光源に採用し、クライオスタットの中に置かれた試料の背面から近赤外光を照射する仕組みを構築した。大強度の光照射と試料の冷却を両立させるため、近赤外光はパルス状に照射することとし、自作の高速光センサを用いてミュオンパルスとの同期を取った。この条件の下で、J-PARC物質・生命科学実験施設ミュオンD1エリアにおいて標準試料(高純度シリコン)のミュエスアール測定を行い、スペクトルに光照射の効果が明瞭にあらわれることを確認した。次年度以降、この装置を用いて近赤外光照射下におけるプロトン伝導性酸化物のミュエスアール測定を順次実施し、赤外光誘起水素拡散促進効果の検証を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度内にミュオン・赤外光同期照射実験の準備を完了することができた。研究は順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、酸化物試料に対してパルスミュオン・パルス赤外光の同期照射実験を行い、赤外光照射によるO-Mu振動の励起に伴うミュオン拡散係数の変化を観測する。この「水素同位体」に対する実験を通して、水素に対して提唱されているO-H振動励起に伴う拡散促進効果を検証する。
|
Causes of Carryover |
購入を予定していた実験装置の一部について、購入時期を平成29年度以降に変更したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越分は赤外光出力を増強するための装置の購入に充て、平成29年度以降に追加配賦される予算については、計画通り酸化物試料の購入などのために使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)