2018 Fiscal Year Research-status Report
X線高分散分光によるブラックホール連星の円盤風噴出メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K17672
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
志達 めぐみ 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 助教 (10755846)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | X線天文学 / ブラックホール / 降着円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、全天 X 線監視装置 MAXI でブラックホール X 線連星の監視を行った。2018 年 3 月には新たなブラックホール 候補天体 MAXI J1820+070 を発見し、MAXI による発見と、Swift 衛星などを用いたその後の X 線スペクトルの変化を論文にまとめた (Shidatsu et al. 2018, Shidatsu et al. 2019)。また、京都大学の研究者らとともに、2006 年と 2015 年に X 線衛星「すざく」と NuSTAR 衛星を用いて得られたブラックホール X 線連星 4U 1630-472 の電離吸収線データを用いて、X 線の連続スペクトル形状の変化に伴う吸収線強度の変化を調べた。その結果、観測された吸収線の変化は、円盤風がX線照射による降着円盤外縁部の加熱により駆動された(熱駆動型円盤風)とすれば説明できることを明らかにした (Hori et al. 2018)。また、昨年度から取り組んでいる、 Chandra によるブラックホールX線連星 H1743-322 の高分散分光データと、熱駆動型円盤風モデルの予測との比較を進めた。2017 年度は 2 つの Chandra の観測について、分光データと同モデルに基づく吸収線シミュレーションとの比較を行った。今年度は、他の数個の Chandra による観測データとの比較を行い、また RXTE 衛星のデータを用いて、アウトバースト期間全体にわたって、同モデルから予測される円盤風の電離度や柱密度の変化の仕方を調べることができた。 さらに、X線天文衛星「ひとみ」で実施する予定であった、ブラックホール X 線連星の超精密分光観測を念頭に置き、前年度に引き続き、2022 年打ち上げ予定の日本の X 線分光撮像衛星 (XRISM) ミッションに参加し、観測データの整約・解析ソフトウェアの開発・検証に携わった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度の実施状況報告書にも述べたとおり、X線衛星「ひとみ」の早期運用終了により、本研究課題の重要な目標の一つである、ブラックホールX線連星の円盤風の超精密X線分光は、「ひとみ」の後継機 XRISM の打ち上げ (2022 年予定)まで持ち越しとなった。また、昨年度から行ってきた、Chandraの過去の観測データと、熱駆動型円盤風モデルに基づく吸収線のシミュレーションの比較の結果について、2018年度内に論文化し出版する予定であった。しかし、2017年度末に理化学研究所から愛媛大学に異動し、2018年度始めに研究環境の構築や授業の準備などに時間を要したこと、円盤風の光電離シミュレーションの結果の検証に想定以上の時間がかかったことにより、当年度内に論文が完成に至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに行ってきた、Chandraの過去の観測データと、熱駆動型円盤風モデルに基づく吸収線のシミュレーションの比較の結果に関する論文の執筆を進め、今年度内に出版する。また、その内容を国内外の学会・研究会にて発表する。また、引き続きMAXIを用いてブラックホール連星の光度変動を常時監視し、アウトバーストを検出した際にはChandra衛星やSwift衛星などに分光観測の提案を行い、円盤風由来のX線吸収線のサンプルのさらなる取得を狙う。
|
Causes of Carryover |
当初の予定では、Chandra の分光データと熱駆動型円盤風シミュレーションの比較の結果をまとめた論文を出版する予定であった。その掲載料と、論文の内容を国際研究会や国内学会で発表するための旅費・講演登録費として使用する予定であったが、「現在までの進捗状況」に述べたとおりの理由で論文の完成が2018年度末に間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。今年度中には論文を出版する予定であり、その掲載料や研究会・学会の旅費・講演登録費として使用する予定である。
|
Research Products
(16 results)